Karl von Burgund 第3幕・3場


●3場の登場人物●

シャルル突進公

アンベルクール

ユゴネー

ラーフェシュタイン







シャルル突進公
『ちくしょう、神はおれを見捨てたもうたか!
 こうもおぞましい敗戦に見舞われるなんて!
 なんとむごたらしい不運がブルゴーニュの民に襲ったことか!

 おれの心はつぶれてしまいそうだ!
 鍛え上げた兵をみな失ったことを思うと体じゅうの血が怒りで沸き立ちそうだ。
 いっそ神があの兵たちともろともにおれを殺してくれればよかったのに!』


ユゴネー
『わが君、あなたはご生還あそばされましたが、数多の兵と将軍は運命に従いその命を
 断ち切られてしまいました。

 わが君に付き従っていった十万、いや二十万のブルゴーニュ公国の若者たちはみな
 死への旅路を辿っていってしまったのですね!』


シャルル突進公
『ああ、神よ!
 あれだけの大軍が、そしておれのまわりにいた数多の兵たちも…』


アンベルクール
『公爵閣下とブルゴーニュ公国は、この地で栄光を全く失ってしまったのですなぁ』


シャルル突進公
『おれひとりのために、国と公家なにもかもが没落の道をたどってゆくのか』


ラーフェシュタイン
『わが君の苦しみと嘆きをわたしたちはどうおなぐさめすればよろしいものか!
 そのお着物のありさまはいったいどうなさったのです?
 あなた様が従えていた貴族たちは、モンタギューやブルノンヴィユはどこにいるのです?』


シャルル突進公
『ノイエンブルクの湖岸か、水底深くを探せば見つかるだろう』


ユゴネー
『ガリオットは、グリムベルクは、ローゼンブッシュとシメイ、メイイはどうなったのです?』


シャルル突進公
『ああ、身を切り刻まれるようなつらさだ!
 彼らはおれの目の前で悶え苦しみながら息絶えていった!』


アンベルクール
『あの数多の兵を従え、公爵閣下の目ともよばれたアントン・フォン・リュクセブルクはどこに?』


シャルル突進公
『おお、悔しい!
 おれのまわりにはもう誰もいない、生きて帰ってきた者なんてひとりもいないんだ!』


ラーフェシュタイン
『わたしは一目でもいいから、このたびわが君の勇ましくも堂々たる行軍の誉れを賜った
 あのラモンに会いとうございます』


シャルル突進公
『ラモンか、ああ、あいつも死んでしまったよ!
 おれのそばに控えるはずの忠義の臣も、道なりに広がる陣中の天幕を共にする者も貴なる者たちも
 もうひとりも残っとらん!

 おお、みんななんの誉れも受けることなく死んでいった!
 どうしておれひとりがこんなみじめに命を長らえなければいけないんだ?』


ユゴネー
『わが君の護衛の者たちもひとりも助からなかったのですか?』


シャルル突進公
『残ったのはこれだけだ、おれがなんとか救い出した財貨と兵たちは!』


ユゴネー
『なんと、わたくしが目にしているわずかこれっきりとは!
 こうも多くのものどもが無に帰するなんて!』


シャルル突進公
『輝かしい日々を共にし、勝利のために戦ってきた友たちはおれを残して死んでしまった』

ラーフェシュタイン
『わたしは生まれてこのかたスイス人は穏やかで戦いを好まぬ人々だとばかり思っておりました』


シャルル突進公
『おれを打ち負かしたアルプスの軍隊を、周りの国々はきっとこぞって褒め称えるだろうな』


ユゴネー
『誇らしい勝利を願って閣下を見送った公邸の門前が、いまや悲しみに満ち溢れておりますぞ』


シャルル突進公
『おれがもしこの衣を引き裂いて、悲しみに胸を打ちつけて、髪をかきむしっても…
 それでもなお、おまえたちはおれをとがめるのかね?』


アンベルクール
『服を引き裂き、胸を打ちつけ、髪をかきむしる。
 そうしたならば、閣下はわたしたちにとってお仕えしやすい穏やかさを持ち合わすことが
 できるでしょうな』


=おしまい=