リューベツァール

シュレジエンのリーゼン山脈は、恐ろしい山の精が支配する地
偉大で力強く、そして変幻自在
彼の名は畏れをもってささやかれるのみ

リューベツァール、リューベツァール
山々と渓谷に君臨し
求めるままになんでも行う
人々は恐怖に打ち震える

リューベツァール、リューベツァール
一度だけ恋をしたけれど
その麗しの乙女はおまえをあざむいてしまった

森の奥深くの湖で
美しい姫君が水浴びをしていた
それを見たリューベツァール
知恵をめぐらせ、彼女をわが城へ連れ込んだ
涙ながらに帰してくれと願う姫君を
リューベツァールは冷たく笑い飛ばすだけだった

リューベツァール、リューベツァール
山々と渓谷に君臨し
求めるままになんでも行う
人々は恐怖に打ち震える

リューベツァール、リューベツァール
一度だけ恋をしたけれど
その麗しの乙女はおまえをあざむいてしまった

リューベツァールはあらゆる宝石と黄金を姫君に贈り付けて
侍女たちも用意して姫君の側仕えを命じた
でも姫君はわが身の不遇をかこち泣き暮らすばかり
そうしていつしか気づいたのだ
この城にあるものすべて
魔法でつくられた幻にすぎないと

リューベツァール、リューベツァール
山々と渓谷に君臨し
求めるままになんでも行う
人々は恐怖に打ち震える

リューベツァール、リューベツァール
一度だけ恋をしたけれど
その麗しの乙女はおまえをあざむいてしまった

ある日姫君はこう言った
“もしこのカブをみんな数える事ができたなら、貴方を夫とします”と
リューベツァールはさっそくカブを数え始めた
でも数えるのに慣れておらず
やっとのことで数え終わった頃には
姫君はとうに逃げ出したあとだった

リューベツァール、リューベツァール
山々と渓谷の国のお殿様
姫君には大切な人がいたんだ
そのことについて考えてもみたまえよ

リューベツァール、リューベツァール
もういっぺんカブを数えてごらん
麗しの乙女はおまえをあざむいてしまったんだよ

リューベツァールはそれからというもの
怒ってすっかりへそを曲げ、山にひきこもり
通りがかる旅人どもに腹を立て、おどしをきかせるようになったとさ

リューベツァール、リューベツァール
山々と渓谷の支配者だが
恋した麗しの乙女にまんまとあざむかれてしまったんだ

リュー・ベ・ツァール!



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