フィリップ善良公(le Bon/ル・ボン)・2


百年戦争のゴタゴタをなんとか片付けたブルゴーニュ公フィリップ。
父が殺されてからの苦悶の日々がようやく報われた。
だが政治面で馬車馬の如く働く羽目になったフィリップは家庭面においてもまたそうなのだった。
妻のミシェルを亡くし、再婚相手のボンヌ・ダルトワも結婚後1年足らずで逝去。
めげずにポルトガル王女イザベルと再々婚しゲンかつぎに『金羊毛騎士団』なるものを創立したが、
長男・次男ともに夭折。そう、嫡子がいない。庶子はいっぱいいるんだけどね…

( ;´‐ω‐`)(あの村娘を結果的に殺してしまったのが悪かったんだろうか…)

そう思い始めて弱気になっていた(?)フィリップを、神様は見捨てなかった!
1433年の秋に3人目の男の赤ちゃんを授かったのだ。
フィリップは生後まもないこの赤ちゃんをシャロレ伯・金羊毛騎士に叙任。
公妃イザベルは乳母の手に任せず、自ら母乳を与えて赤ちゃんを育てた(!)という。
この赤ちゃんが、後にヨーロッパ中の(ある意味で)注目の的になるシャルル突進公である。

幼いころから勤勉な努力家で、父よりもさらに『フランドルの反骨精神』を受け継いでいたシャルル。
長じてからは公国内のフランス派の人々に譲歩する父との間で喧嘩が絶えなかった。
父よりもさらに短気な面があって、何かというと恐ろしい印象のあるシャルル。
後にトマ・バザンが『我にもあらず、むこうみず』と評し、『軽率公』とまで言われるシャルル。
そんなシャルルにも可愛い時分があったんですよ!

さてさて。隣国のフランス国王シャルル7世はブルゴーニュの跡取り息子の誕生を見逃しはしなかった。

( ^Д^)『アラス条約だけでは心配だ。なんとかしてブルゴーニュ公国をフランスの味方につけておかねばな』

ということで、物心つくかつかないかのシャロレ伯シャルルに娘を輿入れさせる。
フランス王女カトリーヌ・ド・ヴァロアとブルゴーニュ公子シャルル・ド・シャロレの結婚。
結婚とはいっても、はっきり言って双方ともにガキンチョである。
夫婦というより、まるっきりしっかり者のお姉ちゃんと小さな弟という構図である。
まあ大きくなれば似合いの夫婦になるだろう、ということで。

だが1446年、カトリーヌは病を得てそのまま没してしまう。
18歳の若さである。13歳になったシャルルがやっとこさその気になるかなぁと思われた矢先であった。
娘を亡くした国王に、泣きっ面に蜂とばかりに災難が降りかかってくる。
父親嫌いな王太子ルイが貴族とつるんで叛乱(プラグリーの乱などなど)を起こしまくる。

( #^Д^)『やっと長い戦争を終わらせたと思ったのに、今度は身内かっ!』

叛乱は国王シャルル7世自ら軍を率いて制圧しにいくほど過激でしつこかった。
しおらしく反省したかと思ったらたちまち牙をむきだしにしてくる。何度鎮圧してもまた新たな叛乱が起こる。
これはどうみてもイタチごっこです。本当にありがとうございました。
百年戦争を終わらせた『勝利王』として知られる彼ですが、けっこう内憂外患の苦労人国王だったようです。

さて、その隙にフィリップ善良公はフランドルの征伐に出かけていく。
ますます調子に乗ってブルゴーニュ公領拡大に奔走するフィリップ。
だが北フランドルのフリースラント(フリジア)を攻囲していた彼にとんでもない一報が入る。
あの父親嫌いの王太子ルイがシャルル7世と大喧嘩の末、こちらに亡命してきたというのだ!

(;´・ω・`)『王太子殿下がこちらにいらっしゃるとは!すぐにお迎えしなくては!』

慌てて戦陣を畳んでブリュッセルにとんぼ返りしたフィリップは、とるものもとりあえず亡命してきた王太子
を自ら迎え入れたのであった。これを聞いた父・シャルル7世は冗談交じりにこうこぼした。

『あいつ(ブルゴーニュ公)は自分のニワトリを狙うキツネ(ルイ)を迎え入れたようなもんだ…』


( ^Д^)(…あいつも馬鹿なことをしたものだな。
      自分の息子のことは親である僕がいちばんよくわかっている。
      あのドラ息子が平気で恩を仇で返すような奴だということはな!)

王太子の正体を知らぬフィリップは、彼をジュナップ(現ベルギー)の城に住まわせて仲良く接した。
ほうほうの体で逃げてきた王太子ルイは、この地がたちまち気に入った様子であった。
しかし王太子ルイを迎える前後からこのブルゴーニュ公国内でも雲行きが怪しいことになっていた。
まあ親子喧嘩と言っちゃえばそれまでなんだけど、ただの親子喧嘩だったらここまで紛糾はしない。

アラス条約の手前、国内のフランス派にもいい顔をしとかなくちゃならないフィリップ。
でも息子のシャロレ伯シャルルがフランスアレルギーかってくらいのフランス嫌いだった。

(#゚∀゚)『俺ァ4分の1フランス人なんだよッ!』(本当は8分の1である)

そう言ってはばからない。
亡命してきた王太子ルイにも表面上は敬意を払っているが、『気に喰わない奴』というのが正直なところだろう。
ただでさえフランス嫌いのシャロレ伯である。
『王太子なんざいつかスマキにして川に突き落したる!』くらいのことは思ってたに違いない。
だいたい、胡散臭い王太子に最大級の敬意を払う父親が理解できない。

(;゚∀゚)つ『オヤジ危機感なさすぎだって!そいつ絶対危ない奴だって!
      フランスに熨斗つけて返してやれよ!』

シャルルの思いも空しく、フィリップはルイに相変わらずのVIP待遇を続ける。

( `・ω・´)『口を慎め、このヴァカ息子!本家の大切な跡継ぎたる方に敬意を払わんでどうする!』

ここに来て親子の意見は見事に衝突する。

喧嘩が度々起こる。
シャロレ伯妃(イザベル・ド・ブルボン)が喧嘩を止める。

また喧嘩が起こる。
フィリップが行方不明になる。
捜す。見つかる。

またまた喧嘩が起こる。
今度は王太子ルイが止めに入る。
ますます悪化する。
(以下無限ループ)


幾多の喧嘩を繰り返し、親子ばかりかブルゴーニュ公国じゅうにギスギスした雰囲気が蔓延する…。
フィリップもシャルルも、もはや苛々を隠さない。
もとはといえばこんなことになったのは王太子を迎えたからじゃないのか?
フランスの王太子を迎えたせいで、ただでさえ多かった親子喧嘩がますます多くなった。
『もう何もかも王太子ルイのせいだ!!! 』
そういう嫌な空気が蔓延り始めたころに、国王シャルル7世が病没したとの報せが届く。

*     +    巛 ヽ
            〒 !   +    。     +    。     *     。
      +    。  |  |
   *     +   / /   イヤッッホォォォオオォオウ!
       ∧_∧ / /
      (´∀` / / +    。     +    。   *     。
      ,-     f
      / ュヘ ルイ| *     +    。     +   。 +
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        /    ! +    。     +    +     *
       ./  ,ヘ  |
 ガタン ||| j  / |  | |||

国王の死の報せに誰より喜んだのは王太子ルイであろう。

G(゚Д゚,,*)『やっとこのギスギスしたところから抜け出せる!(←原因の一つはあんたですよ)
      ウザい父上もいないし!やっと国王になれるんだ! 今すぐパリに国王として凱旋だっ!』

もう気分はすっかり国王陛下。
そんなルイに、フィリップはこう切り出した。

( ´・ω・`)『私が貴方の保護者代わりをしてやったことをお忘れか?』
(゚Д゚,,;)『え?!………は、はい…』
( ´・ω・`)b『私も王太子殿下の戴冠式にお供しますんで、よろしくね☆』

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こうして王太子ルイの戴冠式に無理矢理ついていく形になったフィリップ!
流石だフィリップ!ずうずうしいぞフィリップ!
さあどうなる戴冠式!



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