王太子ギイ、ひとりごちる

(゚Д゚,,;)エート、アレヲコウシテソレヲアアシテ…ムムム…

昨日から一睡もせず自室に篭りながら机にかじりついているフラソス王太子ギイ・ド・ヴァ口ア。
彼は生涯かつてないほどの危機に見舞われていた。さて、その危機とはなんなのか。
苛立った様子で羊皮紙にペンを走らせ、ああでもないこうでもないと苦悩する彼の独り言を聞いてみようではないか。



………はた、これはマズイ展開になったぞ。
なにがマズイって?愚問だな。それぐらい察してくれたまえ。
…そんなこと言われたってさっぱり察せないだと?まったく最近の若者ときたら。
では仕方ない、今日は特別にわたし自らが直々にことのあらましを説明してやろう。
ディスプレイの前の烏合の衆よ、しっかりとわたしの話を聴くのだぞ。

…ことの起こりは数ヶ月前に遡る。
わたしは隣国のサブォア侯の娘ガナロットを娶ったのだ。
なに、ガナロットの歳は幾つだって?
8歳だが?
…なんだね、その変態を見るかのような顔つきは。反逆罪で処刑するぞ。
わたしは確かに女狂いだがな、さすがにそういう趣味は無い…とも言い切れないな。
うん、幼女というのもオツなものだ。

って何を言わせるのだ。違う、重要なのはそこじゃない。
だいたいわたしはガナロットには指一本触れていない。
わたしが8歳のガナロットと結婚したのは、ひとえにガナロットの実家であるサブォア侯家の後ろ盾が
必要だったからだ。フラソス王家におけるわたしの立場は非常に脆弱だからな、このままではあの女狐の
アニェスめに罠にかけられるやもわからんから、とりあえず自身の保身を最優先したわけだよ。

フラソス王太子なのにどうして実家での立場が危ういんだ、とな?
愚問だな。わたしが父上ととても仲が悪いのは知っておるだろう。
じゃあ父上との仲を改善すればいいじゃないか、だと?
そんなことできるか!
どうしてわたしがあのようなゲスのヘタレの屑男に頭を下げねばならんのだ。

だいたいあの男ときたら、わたしがガナロットと結婚したと聞きつけて早速『親の承認を得ずに
勝手な行動しおって』とかなんとか言ってわたしの領地・ドーフィネに攻め入ってきおったのだぞ!
何が親の承認だ、わたしはとっくに成年に達しているどころか中年になりかけているというのに!
そう、これが最初に言った「マズイ展開」だっ!
とりあえずわたしは逃げねばならん。すでに転がり込む先もメドを付けてある。
今は一刻の猶予もないのだ!こんなところで油を売っている場合ではない。
ではオー・ルヴォワール!



ページをめくる