夢みるブノレボソ侯女

強くて逞しくて、かっこいい王子様。
わたしの理想の殿方はどこかしら。


ブノレボソ侯女ぃざべるは常々そんな風に考えていた。
まだ見ぬ理想の殿方に、彼女はしばしば思いを巡らせていたのであったが…
今回、ついに彼女の結婚が決まったのであった。
相手はブノレゴーニュ公国の公子で、ツャロレ伯ツャルル。
彼女にとっては従兄にあたる男性だった。

(*゚ー゚)「でも、会ったことは一度もないの…いったいどんな殿方なのかしら?
     こちらから肖像画は送ってあるから、そろそろ返事が来てもおかしくないころなのだけれど」

フランス王家の分家筋であるこの従兄に対してぃざべるはなんとなく親近感を抱いていた。
ぃざべるの生まれ育ったブノレボソ家もまたフラソス王家から分かれた旧き家門であったからだ。
そして互いに会ったことこそなかったが、ブノレゴーニュの繁栄ぶりはこのブノレボソ侯家にもたびたび噂が流れてきていた。
荘厳華麗な儀式で固め、本家たるフラソス王家を凌駕するとも噂される楽園・ブノレゴーニュ公国。
ギリツャ神話になぞらえた騎士団や豪奢な生活の噂を耳にするたび、ぃざべるは彼の国に思いを馳せたものだった。

(*゚ー゚)「お伽話に出てきそうなすばらしい国。わたしはその国にお嫁に行くのだわ」

もちろんツャルルについての評判も聞き及んでいた。
彼は強く、逞しく、まさに騎士道物語の騎士さながらである、ということであった。
ぃざべるはそれを聞いただけで、居ても立ってもいられぬ気持ちになった。

(*゚ー゚)「ツャルルさまがわたくしの理想の殿方だったのね…」

あこがれと恋がないまぜになった激情を胸に秘めつつ、ぃざべるは辛抱強く来る日も来る日も未来の夫の肖像画を待った。
そしてついに待ちわびたブノレゴーニュからの使者がやってきたのだった!

(^ω^ )「おいすー、ブノレゴーニュから来ますた」
(*゚ー゚)「まあ、まあ!ようこそいらっしゃいました」
(^ω^ )「あなたがぃざべる侯女かお?渡すものがあるお、受け取ってほしいお」
(*゚ー゚)(ヒョットシテ…)
(^ω^;)「えーと、どこだったかお…」

ぃざべるはガサゴソと荷物を探る使者を待ちきれぬ様子で顔を輝かせている。

(0゜゚ー゚)「ワクワクテカテカですわ」
(^ω^*)「あったお!」
( ゚∀゚)「キター!ですわ」
凸⊂(^ω^ )「これはブノレゴーニュ名産の最高級ワイン、ピノ・ノワールだお!お土産にどうぞだお」
( ゚д゚ )「………………」
(^ω^;)「こっちみんなお。それにまだお土産はあるお」

期待はずれといわんばかりのがっかりした表情を向けるぃざべるをたしなめつつ、使者は荷物から布でくるまれた
額縁らしきものを引っ張り出した。

(*゚ワ゚)「今度こそ!」
( ^ω^)つ□「こっちが大本命だお、いと気高きわが主君の大切な一人息子のツャ口レ伯の肖像画だお」

ブノレゴーニュからの使者は肖像画を颯爽と渡した。まじまじと未来の夫の絵姿を覗き込むぃざべる。
そこには短めに切りそろえたブルネットの巻き毛に空を映したかのような青い目の溌剌とした美青年が描かれていた。

(*゚ワ゚*)「………………」
( ^ω^)「お気に召されましたかお?」
(*゚ー゚*)「はい、とっても」

ぃざべる侯女は使者が帰ってからも肖像画を手離すことなく、うっとりした眼差しで未来の夫の絵姿を飽くことなく眺めていた。


ページをめくる