謎の美女・レモーヌ3

引き返す道すがら、ツャルルは先ほどの農夫の話についてずっと考えていた。

(゚∀゚*)「妹が流行り病で…か」

ツャルルは明かりの消えたレモーヌの家の扉を開けた。

( ´∀`)「モニャー!!」
(゚∀゚;)「わっ」

ツャルルが扉を開けて家の中に入ると、今朝レモーヌが市場で買った猫が飛び掛ってきた。
傍にはレモーヌが気絶して倒れている。

( ´∀`)「シャーッ!」
(゚∀゚*)「いや、いや…オレは敵じゃないよ、ニャアニャア」
( ´∀`)「フーッ」
(゚∀゚*)「ニャア、ニャォォォン」
( ´∀`)「モニャ~…」
(゚∀゚*)「ニャ、ニャア~」

ねこ は すこしだけ ツャルル に なついた!

|゚ノ ^∀^)「う、うぅ~…ん」
(*゚∀゚)「レモーヌさん!」
|゚ノ ^∀^)「はっ、リシャールさま?さっき逃げ出したはずじゃ…っ」
(*゚∀゚)「近所の人の話を聞いて、戻ってきたんだ」
(;゚∀゚)「君、本当は男なんだろう?それに妹はとっくに…」
|゚ノ; ^∀^)「!!」
(;゚∀゚)「妹の格好までして、妹の夢を叶えるために今までずっと旅人を…?」
|゚ノ; ^∀^)「……………」
(*゚∀゚)「そんなことしたって、妹はもう戻ってこないよ…それに女の格好をするなんて神のご意思にも逆らうことだ!
     そのままだといずれ、あのジャソヌ・ダノレクみたいに異端として処刑されちゃうよ!」
|゚ノ ^∀^)「何言ってるの!!妹は死んでなんかないわっ!
      妹はわたくしの中に生きてるのよ、妹はわたくしにいつも話しかけてくるのよ。
      『素敵な旦那さまと幸せに暮らしたい、どうかわたしの夢を叶えてほしい』って!
      わたくしは妹のために、妹の夢を叶えるために素敵な旦那さまを探して…っ」
(;゚∀゚)「レモーヌさん!」
|゚ノ ^∀^)「リシャールさま、わたくしの、妹のために……」
(;゚∀゚)「ダメだ、レモーヌさんっ…!」

レモーヌはツャルルの胸倉を掴み、殺気を漲らせた。しかしその時天上からまばゆい光が降り注いできた!

;;从・∀・ノ!::;;「兄者!やめるのじゃー!!」
|゚ノ; ^∀^)「!」

光は人間の形をとっていき、少女の姿となった。

|゚ノ ;^∀^)「……レモーヌ………!」
l从・∀・ノ!リ人「そんなことしちゃいけないのじゃ!兄者はもっと優しかったはずなのじゃ。
         どうして嫌がってる人に無理強いするのじゃ?」
|゚ノ ;^∀^)「レモーヌ!これは全てレモーヌの為にしてることなんだよ!だから…」
(;゚∀゚)(えっ?…レモーヌさん、いったい何に向かって話してるんだ?)
l从・∀・ノ!リ人「違うのじゃ!私は無理矢理連れてこられた人のお嫁になんかなりたくない!」
|゚ノ ^∀^)「でもレモーヌ、お前はいつも言ってたじゃないか…『素敵な旦那さまと結婚して幸せに暮らしたい』と!
      だからボクはお前にぴったりの素敵な殿方を捜して…」
l从・∀・ノ!リ人「……私のために?」
|゚ノ ^∀^)「そうだよ、レモーヌ。すべてお前のために」
l从・∀・ノ!リ人「……でも、私はもうこの世の何処にもいないのじゃ…」
|゚ノ ;^∀^)「!!」

少女の言葉に、一瞬レモーヌはたじろいだ様子を見せた。

|゚ノ ;^∀^)「…何を言ってるんだ、レモーヌ。お前はいつもボクのそばにいたじゃないか。今、こうしてボクのそばにいるじゃないか?」
l从・∀・ノ!リ人「私は……兄者、私には体がないのじゃ。私の姿は誰にも見えないのじゃ」
|゚ノ ^∀^)「ボクには見える。ボクにはお前の姿がきちんと形をとって見えるよ」
l从・∀・ノ!リ人「兄者には見えても、他の人は誰も私の姿が見えないのじゃ」
l从・∀・ノ!リ人「そこの殿方にも、私の姿は見えていないはずなのじゃ」
|゚ノ; ^∀^)「……………」
|゚ノ ^∀^)「…リシャールさま」
(;゚∀゚)「はいっ?」
|゚ノ ^∀^)「今、わたくしの妹がこちらに来ているんだけれど……」

そう言ってレモーヌが指し示した先には、人影はおろか、何もなかった。

|゚ノ ^∀^)「わたくしの妹のレモーヌよ…リシャールさま、見えてらっしゃるでしょう?」

いくら目を凝らしてもその空間には何もない。

|゚ノ ^∀^)「リシャールさま!」
(;゚∀゚)「……れ、レモーヌさん…貴女の妹は、オレの目には」

『見えない。』その決定的な一言をツャルルが声に出そうとしたそのとき…

l从・∀・ノ!:人「……兄者」
|゚ノ; ^∀^)「レ…モーヌ…」
l从・∀・:!リ::「もう無理はしなくていいのじゃ」
|゚ノ; ^∀^)「レモーヌ!」

彼が「レモーヌ」と呼んだ少女の姿は絵の具が薄まるようにみるみるぼやけて、形を失っていく。

l从・∀・:!;;::.「兄者。さっきはひどい事を言って、ごめんなのじゃ」
|゚ノ; ^∀^)「レモーヌ、レモーヌ!どうしてお前の姿がぼやけていくんだ!」
:从・∀・ノ!;:;:.「もう時間なのじゃ…」
|゚ノ; ^∀^)「時間?!そんな…!消えないでくれ、行かないでくれ、レモーヌ!」
;从::∀・ノ:;;:;.「兄者、私のために…ずっと苦しんで、ずっと私のためにお婿さんを捜していてくれたのじゃ。
         でも私もそんな兄者を見てて苦しかったのじゃ、だから今日は特別にお許しをもらってここに来たのじゃ…」
.;从:;∀;::;;:.「兄者、もう私のために苦しまなくてもいいのじゃ…」

|゚ノ; ^∀^)「ダメだ…行くな、レモーヌ!」


兄者、ありがとうなのじゃ…


|゚ノ; ^∀^)「レモーヌ、レモーヌ…」

レモーヌが妹の名を呼んでみても、彼女の気配はもうどこにもなかった。

|゚ノ :::∀::)「ああああああああああああああああああああああああ!!」

レモーヌ…いや、レモーヌの兄はその場に崩折れるようにしてがくりと膝を付き、
獣が唸るような恐ろしい叫び声をあげた。

|゚ノ  ;∀;)「どうして!どうしてボクを連れて行ってくれないんだ、レモーヌ!!
        レモーヌのために、レモーヌの喜ぶことなら、なんでもしてやると…
        あの子は死んでいないと、無理やり自分を騙してまで今日まで生きてきたんだ!!!
        神様!どうしてレモーヌだけを連れていった!
        どうしてボクを一人ぼっちでこの世界に残したんだ!なぜボクを、あのときに…」
(;゚∀゚)「それ以上言っちゃダメだ!」
|゚ノ  ;∀;)「何故?何故アンタがそんな事を軽々しく言えるんだ?」
(;゚∀゚)「だ、だって…妹のレモーヌさんは、あなたに生きていてほしいから、あなたの目の前に顕れたんだろう…?」

ツャルルは、レモーヌの兄の気持ちを精一杯推し量ったつもりだった…

|゚ノ  ;∀;)「生きていてほしいから…か……そうだな、あの子は優しい子だったから、きっとボクを救うために来たんだろうなあ…」

話していることとは裏腹に、レモーヌの兄の口調はどんどん投げやりな調子になってゆく。

(;゚∀゚)「…じゃあ、そんな自棄にならないで、この世界で生きていけばいいじゃないか」
|゚ノ :::∀::)「……………」
(;゚∀゚)「確かに妹さんを亡くしたことは辛いと思うけど。…でもその辛さを、悲しみを乗り越えたら、
     きっとその先に何かいいことがあるかもしれないよ!」
|゚ノ :::∀::)「…あんたは家族を亡くしたことが無い。本当に辛い目に遭ったことがないからそんな無責任なことが言えるんだ、この偽善者」

そう言い放つと、レモーヌの兄は恐ろしい憎しみを湛えた目をツャルルに向けた。

(;゚∀゚)「…っ……………」

いつものツャルルだったら、こんなことを言われたら即座に怒鳴りつけている筈だった。
だが、今回に限ってはどうしてもそれができなかった…
そう、実際ツャルルは生まれてからというもの、肉親の死と向き合ったことはなかったのだ。
暗殺されたという祖父のことも、彼は父親や周りの人々の話でしか知らなかったのである。

|゚ノ :::∀::)「昨日まで元気だった家族が、たった一人の家族が…突然病気に罹って……その次の日に死んでしまうことだって、あるんだ。
       あんたは結局のところ人の苦しみが分からない世間知らずのお坊ちゃんさ。
       だからあんたはボクの苦しみを理解せず、そうやって無神経な物言いで追い詰めていくんだ」
(;゚∀゚)「……………」

レモーヌの兄の口調は、だんだんと強い非難が含まれるものとなっていった。
ツャルルはもはや何も言わずにレモーヌの兄の言葉を受け止めていた…

|゚ノ :::∀::)「あんたは恵まれた環境の中で、幸せな人生を送っていける。
       あんたはそうやって生きていけばいいさ。ボクはね、人生のすべてをレモーヌのために捧げてたんだ。
       レモーヌが病気で死んでしまったなんて、どうしてもそのことを信じたくなかった。
       だからあんなバカな行動に奔って、レモーヌの死という事実に蓋をしてきたんだ。
       お笑いにもならないね、こりゃあ!なんて質の悪い喜劇だろう!」

レモーヌの兄は自嘲を交えた口調で話を続けた。

|゚ノ :::∀::)「レモーヌは消える前にボクに言ったよ。『そんな兄者は見たくない、もう私のために苦しまなくていいから』と、
       最後に…『ありがとう』とボクに言って。ボクは…レモーヌに、レモーヌのために…何かしてやれたんだろうか?」
(*゚∀゚)「だって、妹さんは『ありがとう』って言ってたじゃないか。
     『もう私のために苦しまなくていいから』って、妹さんはあなたにあなたの人生を生きてほしかったから、そう言ってくれたんだろう?
     妹さんはあなたのことが大好きだったからこそ『自分に縛られないでくれ』ってメッセージを残していったんじゃないのか?」
|゚ノ :::∀::)「レモーヌもいない今、何のために生きろって言うんだ!
       生きる目的も見つけられないまま、抜け殻のようになって生きろっていうのか?それがレモーヌの、あの子の願いなのか!」
(*゚∀゚)「目的なんてすぐに見つかるさ!」
|゚ノ :::∀::)「無理だ、無理だ、無理だ!ボクにはもう生きるための目的が見つけられない!
       後にも先にも、レモーヌがボクの生きる目的の全てだったんだ!!
       あの子のいない世界に、この先何十年も苦しみを抱えながら生きていく…ボクにとってはそんな人生は苦痛でしかないんだよ!」
(;゚∀゚)「……………」

レモーヌの兄の言うことを、否定も肯定もできず…ツャルルは再び押し黙るしかなかった。
レモーヌの兄の叫びは夜の闇に掻き消え、部屋の中を長い沈黙が包み込んだ。



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