シャルロット出産

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そんなこんながあった後、シャルロットは誇らしげに、安らかに、そして喜びに満ち溢れた中で赤ちゃんを産んだ。

( ‘∀‘)『赤ちゃんの名前はシャルルがいいわ』

そして続けてこう言った。

( ‘∀‘)『とっても綺麗な赤ちゃんですもの』

(゚Д゚,, )『賛成するところもないでもないが』

ルイは癪に障った様子で顔を紅潮させてそう言いながら、自分の首から下がっている金羊毛騎士団の
ネックレスに指をひっかけつつ部屋をうろうろしていた。

(゚Д゚,,#)『確かに綺麗な子だ。だがシャルルと名づけるのだけは断る』

( ‘∀‘)『カール大帝はこの子の遠いご先祖さまで、わたしの名前はシャルロットよ。
      シャルルはいい名前だと思うわ。なにかご不満なところがおあり?』
(゚Д゚,,#)『シャルルは不幸を呼ぶ名前だ。あの愚かなるわたしの父親や頭をおかしくした祖父も、
      ひ弱な弟も、そしてわたしを敵視するシャロレ伯も…みんなシャルルだ。
      いかん、いかんぞ。その名前には我慢ならん』

( ‘∀‘)『そうまでおっしゃるのなら、お好きなようになさってくださいな』

シャルロットはにこりと笑んだ。

( ‘∀‘)『でも今度女の子が生まれたら、わたしに名前をつけさせてほしいわ』
(゚Д゚,, )『うむ、わかった』

( ‘∀‘)『この子にはなんと名前をつけるおつもりなの?』

(゚Д゚,, )『ジョアシャンというのはどうだね。
     国々が法の下に、戦をせずに統治することで完全なる正義と平和が訪れることを自著で説いた
     偉大なる神学者の名前だよ。

     この子はフランスの希望だ。いつか全世界の希望ともなるだろう。
     わたしがフランスの国王となったあかつきには、この子にわたしの学んだこと全てを教えてやるぞ。

     この子がわたしから学んだことをわたしが死んでからもまた子どもに伝えてくれる。
     そうして世代を越えてゆき黄金時代が築かれた時、世界に安らぎと休息を与えるのだ。
     人々は偉大なるフィオーレのジョアシャンの幻を共に見ることになるだろう』

( ‘∀‘)『この小さな頭にすべて教えこむの?』

彼女は赤ちゃんに優しく触れながら微笑した。

( ‘∀‘)『責任という名の重荷を、この赤ちゃんの肩に負わせるおつもり?』

(´ω` )『その前にすべてのことを神さまに感謝するべきですわ』

ルイーズ・ド・ベトゥレーンはフィオーレのジョアシャンのことなど全く興味のない様子で言った。

(´ω` )『こんなに大きな頭と大きな肩をして、まぁまぁ!お母さまをどれだけ苦しませたことやら』

(゚Д゚,, )『肩もそのうち広く、逞しくなってくるだろうな』

ルイはそう言いながら、その手に赤ちゃんをしっかりと抱きしめていかにも父親らしい素振りを見せて歩き回った。

(゚Д゚,,*)『フランスにこんな王太子は一人もおるまい!』

ルイは自分がもう国王になったかのような気持ちでいた。
しかし、この赤ちゃんが国王になることはなかった。
フランスの長い歴史の中でも、ジョアシャンという名前の王太子は見あたらない。
ジョアシャンはその同じ年に、湯浴みの浴槽の中で溺れ死んでしまったのだ。

(つд⊂)『事故だったのよ』

シャルロットはすすり泣きながら、声を絞りだした。

(つд⊂)『ルレットは子どものことをとても可愛がっていたわ。ほんの少しのあいだ目を離してしまっただけなの』

((゚Д゚,,|||)))『神の御前で詫びるがいい…』

ルイは叫んだ。

((゚Д゚,,|||)))『あの女など袋に縫い込んで川に投げ捨ててしまえばいいんだ!』
(The Spider King・4章32節から)

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この直後、話を漏れ聞いていたオリヴィエ・ル・マルヴェが怪しい行動を起こします。
しばらくしてルレットが死体となって発見されるのです。ああ、本当に『かわいそうなルレット』。
このへんのくだりは、誰も悪くないのに皆が救われない後味の悪い話だと思いました。

『フィオーレのジョアシャン』は、原語だとGioacchino da Fiore(ジョアキーノ・ダ・フィオーレ)。
12世紀から13世紀にかけて実在したイタリアの神秘主義者・神学者です。



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