アンヌ・ド・ブルターニュ4

ルイ12世王妃のジャンヌは前国王シャルル8世の姉にあたる。
幼いときに父親同士の決めた政略結婚という形でルイ12世(当時はオルレアン公子ルイ)の妻となって
いたのである。連れ添って20年、彼女とルイ12世との間は至って良好と思われていたが…

ヽ|・∀・|ノ「ただいま、ジャンヌ。王様になったとたん色々やらなくちゃいけない仕事が増えてさ~、
       ちょっとわたし一人で処理しきれる量じゃないから手伝ってくれないか?」
(´・ω・`)「あらあら、それは大変だわ。じゃあお手伝いしましょうかね」
ヽ|・∀・|ノ□「じゃあこの書類にサインを頼むよ」
□ヽ(´・ω・`)「この書類ね?」

ジャンヌ王妃が書類にサインを書き込もうと文面を見てみると、そこには…

□ヽ(´・ω・`;)「えっ、『離婚届』…?」
ヽ|;・∀・|ノ「ギクッ」

そう、渡された書類をよくよく見てみるとそれはまごうことなき離婚届だった。

□ヽ(´・ω・`;)「ちょっとルイ、離婚届ってどういうこと?!」
ヽ|・∀・|ノ「…ばれちゃあ仕方がないな、単刀直入にこちらの用件を話そう」
Σ(´・ω・`;)「?!」
ヽ|・∀・|ノ「ぶっちゃけ、お前と離婚したい」
Σ(´゚ω゚`;)「えぇ?!」

突然の夫の発言に、ジャンヌ王妃はうろたえた。

(´゚ω゚`;)「どうして?!なんでいきなりそんなことを言い出すの!私、ルイに離婚されるようないわれはないわよ?
      今の今まで私たち、うまくやってきたはずじゃない!!」
ヽ|・∀・|ノ「…うまくやってきた?」

ルイ12世の顔が禍々しく歪んだ。

ヽ|・∀・|ノ「なあジャンヌ、よ~く思い出してみろ。
       もともとわたしたちの結婚は、親に強いられたものじゃなかったかい?」
(´゚ω゚`;)「いえ、でも…政略結婚だとしても私はあなたのことを愛してるわ!」
ヽ|・∀・|ノ「うん、それはよ~くわかってる。確かにお前はウザいくらいにわたしを愛してくれた。
       でもね、正直お前の愛はわたしにとって重荷なんだよ」
(´゚ω゚`;)「!!!??」
ヽ|・∀・|ノ「わたしはこの20年というもの、ずっとお前と離れたいと思っていた。で、ようやく今チャンスを掴んだのさ。
       …この強いられた結婚という悪夢から抜け出すチャンスをね」

淡々とした、子供を諭すような口調で話を続けるルイ12世の態度にジャンヌ王妃はさらにうろたえた。

(´゚ω゚`;)「ル、ルイ…あ、あなた、ひょっとして…」
ヽ|・∀・|ノ「わたしは初恋の女のアンヌちゃんと結婚する!」
(´゚ω゚`;)「そんなーーーー!!!」

ルイ12世は高らかに前王妃アンヌ・ド・ブルターニュと結婚する旨を哀れなジャンヌ王妃に宣言した。
ジャンヌ王妃の顔色は一瞬、血の気が引いて真っ青になった。
そして次の瞬間、眉を吊り上げ目を見開き、金切り声をあげて絶叫した。

((´゚ω゚`;)))「私を捨てて、私の弟の妻と結婚するですって?!この恥知らず!」
ヽ|・∀・|ノ「フフン、何とでも言いたまえ。真実の愛の前に偽りの結婚など無力ゥ!!」
(´・ω・`#)「何が真実の愛よ!あなたって人は、ご自分の地位をお忘れなの?」
ヽ|・∀・|ノ「王様ですが何か?」

(´・ω・`#)「あなたは王様、私は王妃よ!国王夫婦がそう簡単に離婚できるわけがないでしょ!」
ヽ|・∀・|ノ「王様だから何でもできるも~ん」
(´・ω・`#)「あなたの思い通りにさせてなるもんですか!」
ヽ|;・∀・|ノ「む、何をするつもりだ?」
(´・ω・`#)「裁判よ!!法のもとで平等に、あなたと私のどちらが正しいかを証明してもらいます!」

こうして幕を開けた前代未聞の国王夫婦の離婚裁判。果たして結果はどうなるのか?!

ヽ|・∀・|ノ「ま、余裕でこちらの勝訴だね」

さてさて、裁判が始まる前からなぜかもの凄く自信満々なルイ12世。

( ;‘ω‘)「ルイさ…国王陛下!ジャンヌ王妃と裁判ってどういうことなの?」
ヽ|・∀・ |ノ「おお愛しのアンヌちゃん、だってジャンヌと離婚すれば貴女と再婚できるでしょう?」
( ;‘ω‘)「でもそんなことしたらジャンヌ王妃が…」
ヽ|・∀・ |ノ「人でなしと石を投げつけられても構いません。わたしはジャンヌと結婚する前からずっと貴女のことを想っていた!」
( ;‘ω‘)「国王…陛下……」
ヽ|・∀・ |ノ「本当に愛する女と結婚することの何がいけないというのです?」

( ;‘ω‘)(この人、ずっと本気だったんだわ!わたくしがシャルル様と暮らしていたときから、ずっと…)

ヽ|・∀・ |ノ「絶対勝訴を勝ち取ってくるからね、アンヌちゃん♪」

そう言い残すと、ルイ12世はスキップに鼻歌混じりで法廷の階段を登っていった。
アンヌはというと、思いがけず自分が国王夫妻の離婚問題の渦中に居ることを知って、複雑な面持ちでその場に立ち尽くしていた。

( ;‘ω‘)「ルイ様は昔の約束を果たそうとしていらっしゃる。わたくしは……?」

そして異様なざわめきの中で、裁判は幕を開けた。

( ´・ω・`)「夫の言い分は明らかにおかしいです!」
(^ω^裁 )「と、いうと…?」
( ´・ω・`)「私たちはすでに結婚してから20年経ちます。この結婚は教皇にも認められた、合法的な婚姻関係です。
       それを今更離婚なんて不可能でしょう!」
(^ω^裁 )「なるほど……。ふむ、ではルイ12世陛下、これに対する反論などございますかお?」
ヽ| ・∀・|ノ「あります」
(;´・ω・`)「えっ!?」

場が不安げにざわめき、傍聴席の人々は驚きを隠せない様子で騒ぎだす。
ルイ12世はジャンヌ王妃の言ったことに対する異論を捲し立てるようにしゃべりだした。

ヽ| ・∀・|ノ「この結婚はもともとジャンヌの父上であるルイ11世陛下によって強制されたものです!
       わたしはルイ11世陛下に何度も結婚を拒否する旨を掛け合いましたが、陛下はわたしの意見を無視し、
       無理強いしてジャンヌを娶らせたのです。ルイ11世陛下はわたしの父や教皇をうまく丸め込み、
       この障害者をわたしの妻に押しつけたのです…」
(#´・ω・`)「しょ…っ」
(^ω^裁 )「確かにジャンヌ王妃は身体に重い障害を抱えていましたお。そうですね、ジャンヌ王妃?」

ジャンヌ王妃は生まれたときから脚に障害があり、満足に歩けなかった。

(;´・ω・`)「はい、私には確かに脚に重い障害がございます。しかし…」

ジャンヌ王妃が何か言いかけたところを素早くルイ12世が遮る。

ヽ| ・∀・|ノ「えー、皆様もご存知のように、わたしとジャンヌの間には子供がいない」
(^ω^裁 )「ふむ、そうだったお」
ヽ| ・∀・|ノ「その理由というのは…ジャンヌが障害者であるゆえ、わたしと満足な関係が作れなかったためなのです」
(;´・ω・`)「嘘おっしゃい!!!!」

ジャンヌ王妃は夫の思わぬ発言に狼狽した。
そう、ルイ12世はぬけぬけと『自分とジャンヌの間に肉体関係はなかった』と言い出したのである。

(^ω^裁 )「ジャンヌ王妃、貴女の重い障害によって国王陛下は貴女と関係を持つことができなかったと仰せですお」
( ´;ω;`)「そんなの嘘に決まってるでしょう!私の障害は夫婦生活に影響を与えるほどではないわ!
       私たちは今まで仲良く暮らしてきたはずです!」
ヽ| ・∀・|ノ「…ニヤリ」

目に涙を溜めて訴えるジャンヌ王妃を横目で見つつ、ルイ12世は不敵な笑みを口もとに浮かべた。
 



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