1415年10月24日、アジャンクール近郊。
イングランド王ヘンリー5世と王弟クラレンス公トマス、そしてヨーク公エドワードが天幕の中でなにやら話し合っている。
( ´∀`)「さぁ、最後の作戦会議だ!戦法のおさらいはできてるか?」
( ゚д゚ )「はい、兄上。クレシーの作戦を踏襲してフロッグイーター共をボッコボコにしてやりますとも!」
ヨーク公「兵士たちは皆陛下の指示どおり、黙々と武器を磨いておりましたぞ」
( ´∀`)「ふむ!きちんと命令が行き渡っているようで一安心だ」
ヘンリー5世は満足そうに微笑むと、右手を胸の前に持ってきてこぶしを固めた。
( ´∀`)「フランス軍は少なくとも我々の3~4倍の兵を率いているという話だ!
対してこちらは1万にも満たない。気を引き締めて死ぬ気で戦わなくてはな。
むこうのフランス軍に気配を悟られてはいけないから、私語は極力控えるよう、
そして戦法マニュアルをしっかりと頭に叩き込んでおくんだぞ!」
( ゚д゚ )「言われなくとも承知しております、兄上!」
ヨーク公「仰せのままにいたしまする、陛下!」
( ´∀`)「今の言葉しかとこの耳で聞いたぞ。双方ゆめゆめ忘れないようにな!」
ヘンリー5世はさっとマントを翻して兵士たちの見廻りに出かけた。
兄の後姿を見送ったクラレンス公はヨーク公に目くばせをする。
ヨーク公「左翼の指揮は任せましたよ、クラレンス公」
( ゚д゚ )「うむ。右翼はよろしく頼むぞ、ヨーク公!互いにこの戦を生きて帰れるとよいな」
ヨーク公「えぇ。戦が終わった暁には一緒にうまいワインでも飲み明かしましょうぞ」
( ゚д゚ )「祝い酒か、喜んで付き合おう!戦の勝利と栄光、それからうまい酒が飲めることを祈って…」
ヨーク公「そして聖ジョージがわが軍をお守りくださいますよう…」
ヨーク公とクラレンス公は腰に下げた短剣を抜くと互いの刃を軽くぶつけあった。
こうしてアジャンクール近郊の夜が更けていき、やがて東の空が白んで10月25日の朝がめぐってきた。
早朝、戦列を組んだ兵士たちの前に立ったヘンリー5世は空も割れよとばかりの大音声で呼びかけた。
( ´∀`)「皆のもの、我らのちょうど反対側に布陣するフランス野郎が見えるか?」
イングランド兵「サー、イエッサー!」
( ´∀`)「ファッキンフレンチ軍の総数は少なくとも3万人から5万人。風の噂によれば6万人を超えるともいう!
しかし怖気づくな。やつらは所詮、功にはやる脳筋貴族の寄せ集め部隊にすぎん!
少数精鋭として選ばれたきみ達が 死 ぬ 気 で 頑張り抜けば、勝機は必ず見えてくる。
さぁ、戦いの前にひざまずき聖ジョージのご加護を祈ろうじゃないか!」
イングランド兵「イエッサー、陛下にエドワード3世王の栄光を必ずやもたらしてみせます!
聖ジョージよ、どうか我らを助けたまえ!!」
( ´∀`)「おお神よ!わが息子たちのなんと頼もしきかな!
おのおの、わたしとクラレンス公とヨーク公の指示にしっかりと従って戦闘に臨むのだぞ。
ノルマは1人3殺、腕に覚えのある者は1人5殺。これを達成すればファッキンフレンチどもを壊滅させられる!
わたしと共にドーヴァーを渡りここまでついてきたきみ達ならば 決 し て 不可能ではないだろう。
このイングランド王ヘンリーはきみ達を信じているぞ!全軍いざ前進せよーっ!」
イングランド兵「サー!イエッサー!!」
ヘンリー5世を中心に右翼はヨーク公、左翼をクラレンス公に率いられた7000の軍隊はゆっくりとフランス軍に向かって進んでいく。
フランス軍のブーシコー元帥とオルレアン公シャルルはイングランド軍が自分たちに向かって進んでくるのを確認し、
互いに顔を見合わせて何か含みのある視線を交わしあった。
オルレアン公「ゴダンが攻撃を仕掛けてきたようだな」
ブーシコー元帥「いや、あれは囮かもしれませぬぞ。
我らが応戦した隙に伏兵を…と目論んでいるに違いありません」
オルレアン公「それは考えすぎだ、ブーシコー元帥。
やつらの兵力は先の疫病でかなり削られていると聞いているぞ。
斥候によるとイングランド軍の総数は7000から1万がせいぜい、伏兵を仕掛けるほどの
余力はない。こちらの圧倒的な兵力でもって病み上がりの貧弱兵などひとひねりだ。
さぁ!メルドゴダンどもを全員生け捕りにし、王太子殿下に輝かしい戦勝をお贈りしよう。
騎兵隊いざ前進せよーっ!」
フランス軍の両翼に配置された騎兵がオルレアン公の号令一下で一斉に拍車をかけ、イングランド軍に向かって突撃していった。
※ここでおさらい※
イングランド軍(総数だいたい7000~1万人以下)の作戦・『とにかく勝て』
フランス軍(総数だいたい3~5万人)の作戦・『数で押せ押せ』
ヨーク公「む、フランス野郎がやって来たようですな」
( ´∀`)「やはり騎兵を使ってきたな。きちんと対策は練ってあるから心配はいらぬよ。
こういうこともあろうかとクレシー、ポワティエの戦術に学んで生け垣を設置しておいたのだ」
ヘンリー5世の視線のむこうに、先を鋭く尖らせた木を組み込んで斜めに地面に突き立てた「生け垣」と呼ばれる防御柵が長く広がっていた。
( ´∀`)「しかも折からの雨で地面はぬかるんでいる。
いかに手練の騎士といえども突撃の勢いを維持することはできんだろう」
( ゚д゚ )「しかし兄上…相手の兵力はこちらの3倍から4倍です。
生け垣を越えてくる勇猛な者もきっと中にはおりましょう」
ヨーク公「そういう場合のための『合言葉はクレシー』ですぞ、クラレンス公」
( ゚д゚ )「ふむ、そうだったな。よーし弓兵隊全員前へ!」
クラレンス公、ヘンリー5世、ヨーク公の部隊の間に配置されていた弓兵隊が魚鱗の陣形をとって前進した。
( ´∀`)「フロッグイーターどもは『イングランドの弓兵を捕らえたあかつきには指を切り落としてブリテン島に送り返してやる』などと
のたまっているそうだ…わが精鋭たちよ、やつらに大言壮語の後悔をさせてやれ!
フランスの脳筋騎士にいま一度、ロングボウの威力を思い知らせてやるのだ!撃ーっ!」
ヘンリー5世の号令で、5000の弓兵による一斉射撃が始まった!
( ゚д゚ )「敵の騎兵の目をくらませてやれ!撃ーっ!」
30秒に5本から6本の矢を放てるまでに訓練された弓兵は号令に従って黙々と射撃を続けてゆく。
ヨーク公「馬もしっかり狙えっ!撃ーっ!」
クレシー、ポワティエの戦いを踏襲した、弓兵を効果的に配置するモード・アングレ(イングランド流戦術)。
1人あたり1分間に10~12本の矢を射ることができるイングランド弓兵5000人の一斉射撃で、攻撃命令開始から5分後には
少なくとも2万5000本にのぼる矢を放つことができる計算が成り立つ。空を覆う矢の雨はフランス軍の視界をふさぎ、
前進を続けるフランス騎兵隊を足止めした。
オルレアン公「矢を怖れるな!生け垣があるならば馬を捨てて徒歩になれ、突撃を続行せよーっ!
弩兵は援護射撃を行ってイングランドの弓兵にお返ししてやれ!」
ブーシコー元帥「オルレアン公、矢を受けた馬がこちらに向かってきておりますぞ!」
オルレアン公「おっと危ない!」
ブーシコー元帥「兵たちが集まりすぎて互いの間隔が狭くなっておりますから、避けるのにも一苦労ですな…」
オルレアン公「確かにそうだな…避けられてないドンくさいのもちらほら居るようだし」
ブーシコー元帥「最前列の騎兵に後退している者も出てきているようですよ。あっ、後続隊とぶつかった」
オルレアン公は指揮杖をブーシコー元帥の手からもぎ取って振り回しながら怒声を放った。
オルレアン公「そこ!後退するな、前進しろっ!
振り返ることは許さんぞ、各々前だけを見て目の前のイングランド兵を片付けるのだ!」
ブーシコー元帥「あの、オルレアン公。あちらの騎兵は後続騎兵に踏みつぶされてるみたいなので、多分聞こえてませんよ…」
オルレアン公「…………そうか……」
5~6万にのぼるとも噂されているフランス軍は、矢を受けて傷つき暴走した馬が騎兵の隊列攻撃の連携を妨げるなどの事故に
見舞われた上にイングランド軍の設置した生け垣にコースを阻まれてしまい、なかなか思うように攻撃ができなかった。
しかし生け垣をなんとか切り抜けてイングランド軍の最前衛に迫る勇敢な騎兵もちらほらと出てきていたのだった。
フランス騎兵「狙うは王と貴族の身柄のみだ!下賤の弓兵の出る幕などないわ、おとなしく下がっておれ!」
イングランド弓兵「あぁ?今なんつった、このファッキンフレンチ!これでも喰らいやがれオラァ!」
イングランド軍最前列の弓兵たちが各々の武器を手にとり、果敢にフランス騎兵にとびかかった。
フランス騎兵「口を慎め、アングレーの平民が!お前たちは弓を捨てて畑でも耕しているのがお似合いだ」
イングランド弓兵「こちとらロングボウで食ってるんだよ!弓兵ディスってんのか、あぁん?!」
もちろんイングランド弓兵が武器を捨てるわけはなく、フランス騎兵のあまりな物言いに我慢ならなくなった彼らは片手剣や
槍、ハンマーを握りしめてフランス騎兵に襲いかかった!フランス騎兵も負けじと応戦し、イングランド弓兵とフランス騎兵の
壮絶な殴り合いが始まった。
( ゚д゚ )「我らの身柄を狙うというのなら、弓兵たちの攻撃を切り抜けてみせるんだな。
だが我々も貴様らの先ほどの発言を挑戦とみなし、容赦なく攻撃に参加させてもらうぞ!」
クラレンス公、ヨーク公、ヘンリー5世率いるイングランド騎兵が一斉に剣を構え、フランス騎兵に相対する。
フランス騎兵「ちょっ、俺こっちの弓兵と戦闘中なんだけど」
イングランド騎兵「で?」
フランス騎兵「弓兵どもを片付けてからお前らの相手するから、しばらく待っててくれよ」
イングランド騎兵「待てと言われて素直に聞くアホがどこにいんだよ…」
フランス騎兵「えっ?何言ってんの、俺の目の前にいるじゃんw」
イングランド騎兵「あ?」
フランス騎兵「ったく、アングレーはホントに鈍いよな!アホはお前らのことだって言ったんだよ!」
兜の面頬で隠れてはいたもののイングランド騎兵の表情は明らかに怒りのそれへと変わっていき、殺気立った
オーラがあっというまに彼らに広がっていく。
イングランド騎兵「ガッデム!ファッキンフレンチどもめ、いっぺん死んで地獄に落ちやがれ!」
フランス騎兵「ちょw本気にすんなよwww今のはエスプリ・ア・ラ・フランセーズだからwww」
フレンチジョークはイングランド人には通じなかった。
フランス王国とイングランド王国を隔てているドーヴァー海峡はジョークすら許さなかった。
ブチ切れたイングランド騎兵はイングランド弓兵の援護攻撃を行うかたちで次々とフランス騎兵をボコっていく。
イングランド騎兵とイングランド弓兵の手加減ナシの連携攻撃がフランス騎兵を血の海に沈めていく。
これこそモード・アングレの醍醐味である。
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