シャルル・ドルレアンの愉快な捕囚生活(2)

ヽ|;・∀・|ノ「イングランド国王リチャード2世陛下、やっぱり生きてらしたんですか!」


オルレアン公は目の前の半透明の男…リシャール・ド・プランタジュネに向かって跪いた。


ヾ(`∀´;)『いや、死んどる死んどる。僕の足元よ~く見てみ?』

ヽ| ・∀・|ノ「えっ?」


視線をリシャールの足元に移したオルレアン公は、あるはずのものがないことに気がついた。


ヽ| ;∀;|ノ「ひぃっ!膝から下がぼやけてる!!」

(`∀´ )『な?』

ヽ| ;∀;|ノ「てことはリチャード2世陛下、幽霊なんですかぁ?』

(`∀´ )『せや、もう15年くらい幽霊生活やっとるでぇ。あと無理してイングランド語使ったり陛下とかつけんでもえぇで?
       僕ボルドーに住んでたからフランス語わかるしな!』

ヽ| ・∀・|ノ「そっか、そういえばそうでしたね!しかし陛下と呼ばなくてよいとおっしゃるのなら、
        何とお呼びすればいいんです?」

ヾ(`∀´ )『あのな。僕はもう王様やないんやからな、堅苦しい敬語もいらんよ』

ヽ| ・∀・|ノ「そっすか!それならフランクに喋らせてもらいますね!」

(`∀´ )『うん、僕もそっちの方が気が楽や!僕のことはリシャールさんでえぇで』

ヽ| ・∀・|ノ「じゃあよろしくお願いします、リシャールさん!」

⊂(`∀´ )『こちらこそよろしゅう~…せや、忘れとった!君のことはなんて呼べばえぇの?』

ヽ| ・∀・|ノ「んーと、シャルルでいいですよ」

(`∀´ )『呼び捨てっちゅうのも失礼やからシャルル君って呼ぶわ!シャルル君、よろしゅうな~』

ヽ| ・∀・|ノ「いえいえ、こちらこそ」


オルレアン公は机に置いてあった時祷書を開きながらリシャールに話しかけた。


ヽ| ・∀・|ノ「ていうか、リシャールさん。どうしてこのロンドル塔にいるんですか?」

(`∀´ )『話すと長くなるけどえぇ?』

ヽ| ・∀・|ノ「三行で」

(`∀´ )『・お腹がすいて倒れそうやった
      ・倒れて目が覚めたら動けるようになっとった
      ・それでロンドン塔まで来て住みついた』

ヽ|;・∀・|ノ「やっぱ最初っから説明お願いします」

(`∀´ )『ゆとりやなぁ。ほなら最初っから説明するからよ~く聞いとくんやで!』

ヽ|;・∀・|ノ「サーセンw」


リシャールは頭をかきながらベッドに腰かけると、自分のこれまでの境遇の説明をし始めた。


(`∀´ )『まずな、ヘリフォードのヘンリー野郎にな、僕の王冠カツアゲされてん』

ヽ| ・∀・|ノ「その話は父から聞きました!父も怒ってましたよ、『公爵ごときが勝手に俺の甥から王位を取りあげるとは!』って。
        自分も公爵なのにねぇ」

(`∀´ )『それからな、ロンドン塔とか色々な城を転々させられてなぁ…最終的にヘンリー野郎の根城のポントフラに移されてん』

ヽ| ・∀・|ノ(ポントフラ…あぁ、イングランド語だとポンティフラクトか)

(`∀´#)『最初はまぁそれなりの取り扱いやったんやけど、だんだんぞんざいになってきてなぁ…』


リシャールのこめかみに青筋が浮き出た。


(`∀´#)『しまいにはごはんも届けてくれへんようになってな!1日1食どころか3日に1食やで!まったく、これで死なんほうがおかしいわ!』

ヽ|;・∀・|ノ「あの、リシャールさん落ち着いて…」

ヾ(`∀´#)ノシ『落ち着けるかい!3日に1食、3日に1食やで?しかもパン一切れとかやで!?
         ボルドーワインくらい持ってこいっちゅーねん!僕の舌はアングルテール生まれとは違って繊細なんや、
         あんなまっずい黒パンなんて我慢ならへんわ!』

ヽ|;・∀・|ノ「はいはい」


オルレアン公はなんとかリシャールをなだめて話を続けさせた。


(`∀´#)『…でな、アングレー貴族が様子を見に来たときにな、抗議してん。
      「お前何様のつもりやねん!僕のごはんくらいちゃんと出してぇな!お腹すきすぎて死にそうなんやぞこのスカポンタン!」ってな』

ヽ| ・∀・|ノ「結果は?」

(`∀´#)『「うっせー!」言われて振り払われたわ。僕、振り払われた勢いで後ろにフラ~ってなってな、そんで壁に頭ぶつけて気絶してん』

ヽ| ・∀・|ノ「はあ、なるほど」

(`∀´#)『で、目が覚めたころには辺りが真っ暗やった。アングレー貴族は当然帰っとるし、部屋に置いてあったむしろも食器もあれへんのや』

ヽ| ・∀・|ノ「むしろ?」

(`∀´#)『これで寝ろっちゅーふうに言われとったんや!察せぇ!』

ヽ| ;∀;|ノ「ご、ごめんなさぁい」

(`∀´#)『ただでさえ殺風景な部屋だったのにスッキリ片されとって、流石の僕もカチンと来てな。
       こらこら、住んでる人がおんのにこんな扱いするんか!?基本的人権とか幸福追求の権利とか生存権とかすっぽかすんかい、
       ヘンリー野郎の貴族への教育はどうなっとんねん!思てな』

ヽ| ・∀・|ノ「ふむふむ」

(`∀´#)『そんでな、部屋の鍵が開きっぱなしやったから、ちょっとヘンリー野郎のいるロンドンまで行って直談判したろ思てなぁ。一歩踏み出したらこけたんや』

ヽ| ・∀・|ノ「はぁ…」

(`∀´#)『アホ!今のは笑うとこやで~、鈍いやっちゃなぁ!』

ヽ| ;∀;|ノ

厳しいツッコミを受けて涙目のオルレアン公に目もくれず、リシャールは身の上話を続ける。


(`∀´#)『でなぁ、起き上がってから何度歩こうとしてみても、なんでかこけてまうねん。
       おっかしいな~思たんやけどな、とりあえずこのポントフラからロンドンまで行ってヘンリー野郎に文句言うのが先や!思てなぁ』

ヽ| ;∀;|ノ「思って?」

(`∀´#)『まぁどっかで足をひねったんやろ、歩けんならしゃーないなぁっちゅーわけで、匍匐前進でロンドンを目指すことにしたんや』

ヽ|;・∀・|ノ(なにその斜め上の発想!)


下手にツッコむとまた怒られそうなので、オルレアン公は努めて平静を装って訊き返した。


ヽ| ・∀・|ノ「そうですか。匍匐というと第四匍匐で進まれたので?」

(`∀´ )『や、スピード重視の第一匍匐で行ったでぇ』

ヽ|;・∀・|ノ「ヨークシァからロンドルまでですかぁ?」

(`∀´ )『足が使えんもん、しゃーないやん』

ヽ|;・∀・|ノ「でも3日に1食しか食べてないような半病人がヨークシァからロンドルまで匍匐前進って限りなく無理に近いんじゃないですか」

(`∀´ )『ん~、そん時はな、不思議とお腹もすいとらんかったし元気も取り戻してん。そんでな、こりゃいけるぞ思てレッツ☆カサカサ~ッとな』

ヽ|;・∀・|ノ「ていうか(元)国王陛下っていういとやんごとなき御身がどうして匍匐前進を知って…」

(`∀´ )『父ちゃんからなぁ、「戦場で役に立つから覚えとけ~」って言われたんや。シャルル君も軍人なら覚えといたほうがええんとちゃう?』

ヽ| ・∀・|ノ「いや、もう捕虜になってますんで使う機会もないと思います」

(`∀´;)『あっ、せやったな!ごめんなぁシャルル君』


リシャールは申し訳なさそうな顔をして謝るジェスチャーをしてから、さらに話を続けた。


(`∀´ )『そんでポントフラから華麗に脱出していざロンドン、ちゅーわけや。見つかるとヤバいから第一匍匐でカササ~ッと素早く移動な!』


ヽ| ・∀・|ノ「ロンドルまで何日かかったんですか?」

(`∀´ )『んー、よく覚えとらんけど相当かかったでぇ。でも不思議と疲れんかったから、よっしゃ全然いける!思てなぁ。一路ロンドンや』

ヽ| ・∀・|ノ(ロンドルまで匍匐前進するリシャールさん…なんか想像つかないや)

(`∀´ )『ほんで、まぁともかくもロンドンに着いたわけや。するとな、なんかザワザワしとんねん』

ヽ| ・∀・|ノ「はぁ」

(`∀´ )『ちょっと詳しゅう話聞いてみよ思て、市場に行っておばちゃんに話しかけてみたんや』

ヽ| ・∀・|ノ「ふむふむ」

(`∀´#)『したら、「なんやざわついとるけど、何かあったん?」とこっちが聞いても無視しくさるねん!」


またリシャールのこめかみに青筋が浮き出てきた。


(`∀´#)『なんやねんあのおばちゃん!何様のつもりやねん!(元)王様が話しかけとんのに無視とかホンマありえへんわ~!』

ヽ| ・∀・|ノ「おば様だと思います」

Σ(`∀´ )『あ、そっか!おば様やな、確かにそうや。シャルル君なかなかうまい事言うやん!』


リシャールはいかにも愉快そうにケラケラと笑いながらオルレアン公の肩を叩いた。
(が、なにぶん半透明なので触れることはできず、肩を叩く様子はジェスチャーにとどまった)


(`∀´ )『あぁおもろかったぁ。せや、どこまで話したっけなぁ?忘れてもうたわ』

ヽ| ・∀・|ノ「おば様に話しかけて無視されたところまでです」

(`∀´ )『お、そやったな。で無視されてなぁ、なんやねんコイツ思て別の女の子に話しかけてん』

ヽ| ・∀・|ノ「話しかけたらどうなりました?」

(`∀´ )『スッと目の前横切っていかれたわ。空気扱いにしてもひどいわ~思て、また別のおっちゃんに話しかけたわけやけど、また無視されてな。
       一体なんやねん、おかしぃなぁ思いながらしばらく市場をぶらつくことにしたわけや。第一匍匐で』

ヽ| ・∀・|ノ「ふんふん」

(`∀´ )『でな~、よく耳を澄ませてたら、僕の名前が聞こえてくんねん』

ヽ| ・∀・|ノ「リシャールさんの名前が?そりゃまたどうして」

(`∀´ )『「リチャード陛下、おかわいそうにな~」とか「きっと化けて出るぞぉ」とか…』

ヽ|;・∀・|ノそ


何か嫌な予感がしたオルレアン公だったが、とりあえず黙ってリシャールの話を聞くことにした。


(`∀´ )『何言うとんねん、こっちはまだピンピンしてるでぇ!思てなぁ。
       とりあえず知り合いのいるロンドン塔で話を聞いてみよちゅーわけで、また移動や』

ヽ| ・∀・|ノ「第一匍匐で?」

Σd(`∀´ )


リシャールはこの上なく爽やかな笑顔でサムアップしてみせた。




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