(`∀´ )『でな、ロンドン塔までまた第一匍匐でカサササ~ッと行ったわけやけど、また僕の名前が噂されとったんや。
さっきみたいに失礼なこと言いよったら殴ったろか~思って拳を固めてロンドン塔の塀の上にビシッと座ったわけやけど…』
ヽ| ・∀・|ノ「へー、そりゃかっこいーですね」
(`∀´ )『お、今度は古典的なシャレで来たなぁ。ちょっとクスッてなってもうたわ。
で話を戻すけどな、僕の知り合いが丁度目の前を通ってん。めっちゃ悲しそうな顔しててな。
せやからこっちから「おい、そんな辛気くさい顔してどないしたんや~」って声をかけたんやけど無視されてなぁ』
ヽ|;・∀・|ノ(…そろそろ気づくべきなんじゃないかと…)
(`∀´ )『もう、一体全体なんやのん!思てな!仕方ないから周りの噂話に耳を傾けることにしたわけや。
するとな、「ヘンリー陛下はリチャード陛下の亡骸をどこに葬られるのだろうな」ちゅー声が聞こえてなぁ…
その後すぐに「ウェストミンスターではないことは確かだ。リチャード陛下は裁かれて廃位された王なのだから、
王家の墓標に葬ってはもらえないだろう」てな』
ヽ|;・∀・|ノ
話の核心に入ったらしい、と真面目な顔つきになったオルレアン公に向かってリシャールは話を続けていく。
(`∀´ )『亡骸ってなんやねん!!僕はちゃ~んとここにおんねんで?
ピンピンしとるがな、ついでにあっちもビンビンやがなってわざとボケをまじえて絶叫したんやけどな。
だーれも僕の声が聞こえんみたいで噂話を続けんねん。渾身のボケまじりにシャウトしたこっちの立場がないやろ?』
ヽ|;・∀・|ノ(ツッコミどころがありすぎて困るボケだ…ていうかこんなこと絶叫する人に関わりたくないよ)
(`∀´ )『なんやねんシャルル君、そのドン引きやっちゅー感じの顔は』
ヽ|;・∀・|ノ「イ、イエイエ。ドンビキ ナンカ シテマセンヨ? タダ チョット ノリ ガ チガウナア ト オモッタ ダケ デス」
(`∀´ )『ボルドー仕込みのシモネタならまだあるでぇ。聞きたいか?聞きたいやろ?な?な?』
ヽ|;・∀・|ノ「シモネタは後でも話せますから、まずはロンドル塔に来てからのお話の続きを…」
Σ(`∀´;)『おぅっ、忘れかけとったわ!しまったしまった。ほなら続きを話すでぇ。
でなぁ、僕の声が誰にも聞かれへんみたいでな、流石にこれはなんかあるんちゃうかって思えてきたわけや!
それで座ってる自分の足元を見てみたらな、膝から下がぼや~っとしとったんや!蜃気楼とか霧みたいにな』
ヽ| ・∀・|ノ「なるほど、膝から下がないんじゃうまく歩けないのもさもありなんですねぇ」
(`∀´ )『人間ってのはな、こういうありえへん事が起こったときはどうも他事考えてまうみたいでな。
頭の中で♪ろ~んどんぶりっじ ふぉーりんだうん♪がぐ~るぐるし出してなぁ』
ヽ| ・∀・|ノ「♪ろ~んどんぶりっじ ふぉーりんだうん、まい ふぇあ れいでぃ♪ですね。
なんかこちらに来る時にも子供たちが歌ってましたよ」
(`∀´ )『で、僕の足ないやん!どこ置いてきてん!!ってパニックや…
人生であんだけパニックになったんはヘンリー野郎がチェスター陥としたって聞いた時とヘンリー野郎に王冠カツアゲ
された時くらいやな。それくらい慌てたわ』
そう言いながらリシャールは肩をすくめてみせた。
ヽ| ・∀・|ノ(ほとんどが亡くなったヘンリー4世陛下絡みというのがなんとも…)
(`∀´ )『でな。僕を無視してくんのもひょっとして僕の姿が見えへんからなんか?と思い当たってなぁ!
足ないってことはひょっとして僕死んどんのかいな!嘘やありえへん!って喉がつぶれるかっていうくらいのハイトーンで
叫んだのやけど、誰も振り向いてさえくれなくてなぁ』
ヽ| ・∀・|ノ「うぅん。ここまで来たら認めるしかないでしょう、普通」
(`∀´#)『シャルル君は死んだことがないからわからんのや!
あのな、自分が普通に動いて生活しとるって思っとったのにいきなり「死んどる」ちゅー事実を突き付けられたんやぞ?
なんでやねん!思た後に、まさか僕、気絶してる間にヘンリー野郎の手先に殺されたんちゃうかって思い当たってな~。
もうヘンリー野郎へ憎しみ250%や』
リシャールのこめかみに何度目かの青筋が浮き出てくる。どうやら怒りっぽい性格のようだ。
ヽ| ・∀・|ノ(ふらついて壁に頭ぶつけた時の打ちどころが悪かった、という選択肢はないんですね)
(`∀´#)『その瞬間な、なんや無いはずの足がドーンと重なってなぁ。
それまでは匍匐前進でなんとか動けてたんが、あんまり動かれへんようになってまってな。
それに急にお腹もすいてきてめまいがするわ、どうもこのロンドン塔から出れんくなったわけや』
ヽ|;・∀・|ノ「あの。特定の場所から動けなくなった霊っていうのは一般的に地縛霊というんじゃ…」
Σ(`∀´ )
ヽ|;・∀・|ノ「気づいてなかったんですか!」
(`∀´ )ゞ『15年幽霊やってたけど、自分が地縛霊だとは気ぃつかんかったわ~』
ヽ|;・∀・|ノ「えええぇぇえ!」
ヽ|;・∀・|ノ「すごいですね、15年も幽霊生活してて自分が自縛霊だって知らなかったとか」
(`∀´ )『なんか褒められとる気がせんのやけど…』
ヽ|;・∀・|ノ(いや、皮肉です!)
オルレアン公は少し呆れ顔になっていた。なにしろこのリシャール、どこかずれているのである。
生前に餓死寸前までほっとかれたために見た目こそやせ細ってはいたものの、落ち窪んで鬼気迫るオーラを放つ射るような眼差しは
健康体ならば「目元涼やか」と形容されたであろうし、膝から下がぼやけてはいるが背もすらりと高く、手や指先などはいかにも王杖以外は
持ったことがないんですと言わんばかりにほっそりしている。
おそらく普通に生活できていたころはかなりのイケメンぶりを見せていたのではないかと思われた。
だが話してみると限りなく三枚目に近い言動ばかりで折角の二枚目が台無しである。
ヽ|;・∀・|ノ(なんかなぁ…色々と残念な人だよな、リシャールさん)
(`∀´ )『ん?なんなん、可哀想なものを見るような目ぇして』
ヽ|;‐∀‐|ノ「いえ、なんでもないです」
(`∀´ )『???』
むこうが気付かなければどうということはない。オルレアン公は心の中でそっとつぶやいた。
(`∀´ )『まぁええわ、話続けよか~。でなぁ、自分が死んだっちゅうことが分かってな。
おんどりゃヘンリー野郎がぁ!化けて出ていてもーたるでぇ!とも思ったんやけどなぁ、それよりも何よりもな…
もういっぺんイザベルちゃんに生きて会われへんのが悲しゅうてな』
ヽ| ・∀・|ノ
(`∀´ )『僕な、ロンドン塔でもポントフラでもず~っとイザベルちゃんは元気かいなって心配しとったんや。
何しろ閉じ込められっぱなしやから情報入ってこーへんし。もし僕みたいな目に遭ってたらて思うと夜も寝られへんかったわ』
ヽ| ・∀・|ノ「…大丈夫です。1年ほど城に閉じ込められたそうですが、ちゃんとフランスへ戻りましたから」
(`∀´ )『ん、フランスに戻っとったん?無事にドーヴァー越えられたんか、ならよかった!
でもあのヘンリー野郎イザベルちゃんまで閉じ込めとったんかいな…ひっどいことしよんなぁ』
ヽ| ・∀・|ノ「…やっぱり閉じ込められていたせいでしょうかね、フランスへ帰ってきてからはいつも沈んだ面持ちで窓の外を眺めてました」
(`∀´#)『全く、相手はまだ子供なんやぞ?それを城に1年も閉じ込めるとか考えられんわ!
ヘンリー野郎は自分も子供いるくせして、そこらへん思い至らなかったんかいな!』
ヽ| ・∀・|ノ「イングランド国内も結構混乱していたそうですから、ヘンリー4世陛下としては前王妃がいらっしゃることでもたらされる
さらなる混乱を出来るだけ避けたかったのかもしれませんよ。
既に私の父が、リシャールさんが殺されたと聞いてヘンリー4世陛下に挑戦状を叩きつけてましてね。
まぁ『公爵風情が国王に喧嘩売るとかpgr』って返されましたが」
(`∀´#)『自分も元公爵風情のくせに何言うとんねん!ヘンリー野郎はホンマにむかつくやっちゃな~』
眉間にしわを寄せて怒るリシャールをなだめて、オルレアン公は話を続けた。
ヽ| ・∀・|ノ「それでですね。父は戻ってきたイザベル王女を僕と結婚させようか、という話をイザボー王妃に持ちかけたんですよ。
イザボー王妃も『シャルル君なら優しい子だから、イザベルの気持ちも解きほぐすことができるかもしれないわ』とおっしゃって、
イザベルと僕との結婚に賛成なさったそうです」
(`∀´ )『ありゃ、イザベルちゃんとシャルル君結婚してたんかいな!』
ヽ| ・∀・|ノ「はい!可愛い娘も生まれましたよ」
(`∀´ )『そっか、子供もおるんか!イザベルちゃん、僕と別れてから幸せになれたんやな』
ヽ|;・∀・|ノ「うぅん……幸せにしてやれたかどうかは…」
オルレアン公は表情を曇らせ、言葉を濁らせた。
(`∀´ )『だって、話してて思たんやけどシャルル君めっちゃええ子やん?話もおもろいしな。
イザボーかあちゃんの言っとるとおり、よう気ぃつく優しい子やわ』
ヽ| ・∀・|ノ「そうですか?」
(`∀´ )『こんなええ子と一緒におって、イザベルちゃんが幸せになれんなんてありえへんで?』
ヽ| ・∀・|ノ「でもイザベルはめったに笑うことがなかったんです。毎日毎日窓の外を眺めて…」
(`∀´ )『窓の外って…なんで毎日そんな外ばっか見とんねんな、イザベルちゃん』
ヽ| ・∀・|ノ「…『明日になれば、リシャールさまはきっとアイルランドから帰ってくるはずなの』と言って…」
(`∀´ )『え』
言いにくそうに語尾をぼかし目を伏せたオルレアン公に、リシャールは驚いた様子で絶句した。
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