シャルル・ドルレアンの愉快な捕囚生活(6)

一方オルレアン公は部屋からそう離れていない場所で険しい面持ちでうんこ座りしていた。


ヽ|#‐∀‐|ノ「あーもう!自分で自分に腹が立つよ…」


オルレアン公も、内心で自分がリシャールに対して理不尽に八つ当たりしているという自覚はあった。
しかし彼があまりに呑気にイザベルのことを聞いてきたためについうっかり頭が沸騰してしまったのだ。


ヽ|;‐∀‐|ノ「…リシャールさんに後で謝らなくっちゃな~」


背中を丸めて俯くオルレアン公に、丁度通りかかった太めのイングランド貴族が心配そうに声をかけた。


(英^ω^)「おっ?深刻そうなお顔をなさってどうなさいましたお?」

ヽ|;‐∀‐|ノ「うん、リシャールさんがね…」

(英^ω^)「リシャール…?ひどいフランス訛りですおね。あなたひょっとしてオルレアン公ですかお?」

ヽ|;・∀・|ノそ「い、いかにもそうだ!でも逃げるつもりはないから通報しないで!」

(英^ω^)「部屋からちょっと出たところでうんこ座りしといてそんなこと言われても…」

ヽ|;・∀・|ノ(ひぃーっ!)


焦った様子を見せるオルレアン公を見て、太めのイングランド貴族は愉快そうに笑いだした。


(英^ω^)「おっおっwwwオモシロスwwwww」

ヽ|#‐∀‐|ノ「君。人の慌てる様子がそんなに笑えるのかい」

(英^ω^)「ゴメスwwwww」

ヽ|#‐∀・|ノ(悪い人ではないんだろうが、なんだかなぁ)


イングランド貴族の笑いが収まるのを待って、オルレアン公は話を切り出した。


ヽ| ・∀・|ノ「ところで…このロンドル塔について聞きたいんだが。ここって幽霊とか妖精が出るみたいな噂はあるのかい?」

(英^ω^)「あー、そりゃもう山ほどありますお!ピクシーにブラウニーは日常茶飯事ですおね~」

ヽ| ・∀・|ノ「さすがアングルテール!あと幽霊について詳しく聞いてもいいかな」

(;英^ω^)「えっ、幽霊…?」


イングランド貴族の顔色がどうも思わしくない。


ヽ| ・∀・|ノ「その様子だと何か知ってるみたいだね?」


イングランド貴族は口ごもりながら話を始めた。


(英^ω^)「えぇと…僕も噂程度でしか知らないんですけど、オルレアン公…丁度貴方がいらっしゃるお部屋に出るとか
      出ないとかって話がちらほらとあるんですお」

ヽ| ・∀・|ノ「そうなの!一体どんなのが出るのか教えてくれないかな」

(σ英^ω^)σ「ずばり、髪ぼっさぼさの骸骨みたいな男が『出る』って噂ですお!」

ヽ| ・∀・|ノ「やっぱり!」


イングランド貴族は驚いた様子でオルレアン公を見つめた。


(;英^ω^)「やっぱりって…ひょっとしてオルレアン公、見えたんですかおっ?!」

ヽ| ・∀・|ノ「うん。君の言ってるようなのをまさしく見てきたところさ」

(ノシ英^ω^)ノシ「ずるいお!うらやましいお!僕にも見せろお!
        僕だって夜中にあの部屋に行ってみたりしたのに、どうしてフランス貴族に見えて僕には見えないのかお?」

ヽ| ・∀・|ノ「たぶん君には運が無かったんだよ。ま、見えても別に得するわけじゃなし」

(英^ω^)「そりゃ見える人の傲慢ってやつだお。僕だって見たいのに!
       オルレアン公、せめてどんなのを見たのかだけでも話してほしいお。絶対周りには言いませんから!」


オルレアン公は少し意地悪な微笑みを浮かべた。


ヽ| ・∀・|ノ「聖ドニと百合の花に誓って?」

(英^ω^)「フランスの聖人と象徴に誓うなんてとんでもない!聖ジョージとその十字架にかけてなら誓うお」

ヽ| ・∀・|ノ「聖ジョルジュ…仕方ないな。郷に入りてはってやつか」


イングランド貴族は聖ジョージに誓いを立てたあと、オルレアン公に向き直った。


(英^ω^)「さ、話してもらいますお。我が国の守護聖人聖ジョージにかけて秘密にいたすゆえ、何を見たのかおっしゃって下さいお!」

ヽ| ・∀・|ノ「わかった。えーとね、確証は持てないんだが私が見たのはどうも君たちの国の王様をやってたリシャー…じゃないや、
        君たちの国の言葉で言うところのリチャード2世陛下っぽい人だったよ」

(;英^ω^)「えっ」


『リチャード2世』の名前を聞いたイングランド貴族の顔色が青くなり、言葉もしどろもどろになりだした。


(((;英^ω^))「あわわ…そんな馬鹿なことが……
          ど、どうしてあのお方がこんな所に出るのかお?陛下がきちんと埋葬もなさったのに…」

ヽ| ・∀・|ノ「死んだ時のことはあんまり覚えてないって言ってたよ。ていうか死んだことに気付かずロンドルまで来ちゃったそうだよ?」

(((;英^ω^))「オルレアン公、ひょっとしてぼ、僕をおどかそうと嘘ついてるんじゃないですかお?」

ヽ| ・∀・|ノ「嘘なもんか。リチャード2世陛下はポンティフラクトで飢え死にしそうな目に遭ったと言ってたいそう怒ってらっしゃったよ?
        それにヘンリー4世陛下にロンドルまで連れてこられたときに、町の人に生ゴミからう●こまで投げつけられたというお話もお伺いした」

(((;英^ω^))「おっ…僕の知らない話もあるお。な、なんでオルレアン公がそこまで知ってらっしゃるのですかお?」

ヽ| ・∀・|ノ「だからさっきから、リチャード2世陛下ご本人からお伺いしたと言ってるじゃないか…」

(;英^ω^)「うーん」


太めのイングランド貴族は観念したように俯き、真剣な眼差しで話しだした。


(英^ω^)「2年前に、ヘンリー5世陛下のご命令によりリチャード2世陛下のご遺体を移葬することになったんですお。
      それというのも『リチャード2世陛下がアイルランドに渡って生きている』という噂が立ちまして、陛下はこの噂が叛乱につながると
      非常にまずいとお考えになりましたお。オワイン・グリンドゥル様のような事例もございましたので…だからリチャード2世陛下の
      ご遺体が埋葬されていたキングス・ラングリーから急いでウェストミンスターへ運ばれたんですお。それで鎮魂ミサも行って…」

ヽ| ・∀・|ノ「リチャード2世陛下ご本人は多分ご存じないだろうねぇ。なんせ15年もロンドル塔で地縛霊になって住んでいたらしいし…
       ちょっと部屋に行って伝えてくるよ」

(英^ω^)「待ってくれお、僕も見てみたいから付いていくお!」


オルレアン公と太めのイングランド貴族が部屋に戻ると、リシャールはベッドにうつぶせて横たわりしくしく
泣き続けていた。


゚・(つ∀∩ )・゚・『ぐすっ、ぐすん…イザベルちゃん…ごめんなぁ、堪忍してなぁ…』

(英^ω^)「何も見えないお」

ヽ| ・∀・|ノ「ベッドの上で泣いてらっしゃいますね。あの…リシャールさん、さっきはキツいこと言ってごめんなさい」

゚・(つ∀∩ )・゚・『ぐすん…』


リシャールは泣きながら寝返りをうって、ベッドのシーツで鼻をかむそぶりを見せた。


ヽ| ・∀・|ノ「リシャールさん、それ僕の寝るベッド…」

(;英^ω^)「あっ、ベッドのシーツが動いてるお!てことはあそこに何かいるんだおね!」

ヽ| ・∀・|ノ「うん。鼻をかまれたよ」

(英^ω^)「幽霊も鼻水出すのかお、知らなかったお」


オルレアン公は静かにリシャールのもとに歩み寄った。


ヽ| ‐∀‐|ノ「リシャールさん。イザベルはあなたに会えないのを悔みはすれ、怨んではいませんでした。
        …僕は、あなたのことを怨んでいないと言えるほど心は広くないですが…本気であなたが全て悪いのだとは思ってませんし、
        なにより愛するイザベルの遺志を尊重してます」

オルレアン公は一旦言葉を切って、リシャールの前に優しく手を差し伸べた。




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