゚・(つ∀∩ )・゚・『…ぐすっ』
リシャールは泣き腫らした目をオルレアン公に向けたまま、なかなか手を取ろうとしない。
ヽ|;・∀・|ノ「リシャールさん!ハンカチあげますから涙をひっこめてくださいよ…」
(つ∀∩ )「アホか!泣くなって言われてパッと涙が止まるヤツがどこにおんねん!」
ヽ|;・∀・|ノ「ある程度分別ある大人ならできるでしょ!」
(英^ω^)「リチャード2世陛下、泣いてらっしゃるんですかお?」
ヽ|;・∀・|ノ「うん…6年前に死んだイザベルのことを話してね…」
(英^ω^)「イザベル、イザベラ…?」
太めのイングランド貴族はしばらく考え込んでいたが、急に何かを思い出した様子で顔を上げた。
(英^ω^)「リチャード2世陛下の奥方様であらせられたフランスのイザベラ姫かお?」
ヽ| ・∀・|ノ「そうそう」
(英^ω^)「フランスに戻られてからは確かオルレアン公、あなたとご結婚したとお聞きしましたお」
ヽ| ・∀・|ノ「うん」
(英^ω^)「そうなるとリチャード2世陛下とオルレアン公って穴兄弟なんですかお?」
(つ∀∩ ))
ヽ| ∀ |ノ
リシャールの顔がみるみるうちに青ざめ、オルレアン公の顔が朱に染まった。
ヽ|#・∀・|ノ「君!イザベルを侮辱するのはやめてもらおうか」
(;英^ω^)「おっ?」
(`∀´|||)『今の言い草は聞き捨てならんなぁ…?』
リシャールがイングランド貴族を睨みつけた瞬間、部屋中にハウリングが響き渡った。
(;英゚ω゚))「お゛お゛ぉぉお゛おっっおっ!!1!!!!」
ヽ|#。∀゚|ノ「ああ゛ぁぁああ゛あ゛ぁ!!」
(`∀´#)『おい、豚野郎!さっき自分の言ったこともういっぺん言うてみい!!』
(((;英゚ω゚))「おぎゃぎゃががぎぎゅぎゅ」
幽霊となっているリシャールの声はイングランド貴族には届かない。しかし怒りで増幅されたハウリングが声の代わりに部屋全体に広がっていた。
(`∀´#)『さっきのはアレか?僕がイザベルちゃんに手ぇ出しとったと言いたいんかぁ?!』
((;英゚ω゚)「あ、あうあう…」
耳を押さえてうずくまるイングランド貴族に、足元をふらつかせたオルレアン公が全体重をかけて倒れ込んできた。
|||ノ・∀.|ノ「おおっと!足がもつれてしまったあああ!」
((;英゚ω゚)「ぉぐふっ」
イングランド貴族は明らかな困惑の色を涙ぐんだ両目に浮かべてオルレアン公を見やった。
((;英゚ω゚)「なな、何をなさるのでですかおっ、オルレアン公?!」
ヽ|#・∀・|ノ「君はイザベルの貞節を侮辱した…」
オルレアン公はイングランド貴族の二重あごの皮をぐいっと引っ張った。
(;英゚ω゚)「!!?」
ヽ|#・∀・|ノ「イザベルの魂に謝ってもらおう」
(|||英゚ω゚)
オルレアン公の血走った眼がイングランド貴族を射すくめた次の瞬間、彼のぽっちゃりした頬に鉄拳が直撃した。
(英##)ω(#)
ヽ|##'∀`|ノ「ふん、このゴダンが!」
(`∀´#)『シャルル君、僕のぶんももう一発殴ったってくれへん?』
ヽ|##'∀`|ノ「リシャールさんも怒ってらっしゃる。左の頬を差し出してもらおうか」
そして再び殴られたイングランド貴族はオルレアン公の拳の下に雑巾よろしく倒れ伏した。
(英##)ω(#)「…なんで殴られなくちゃならないのかわからないお…だってフランスのイザベラ姫とリチャード2世陛下はご結婚なさってて」
ヽ|##'∀`|ノ「イザベルは1489年生まれだよ?リチャード2世陛下が王位を逐われたときは10歳だよ?」
(英##)ω(#)そ
(`∀´#)『要するに「白い結婚」っちゅーやつや!判ったか豚野郎!』
(英##)ω(#)「…ちらほらとお名前を聞くだけで、ご年齢までは全く知らなかったんですお…」
ヽ|##'∀`|ノ「…知らなかったことは言い訳にならないし、僕の妻を侮辱した事実は変わらないよ?」
(英##)ω(#)「申し訳ありませんお…」
イングランド貴族は腫れあがった頬を押さえ、居心地悪い空気が漂う中で背中を丸めて出ていった。
(`∀´ )『おおきにシャルル君!きみ、案外腕っぷし強いのな~』
ヽ| ・∀・|ノ「いやぁ、それほどでもありますよ。これでも一応アジャンクールでは指揮とってましたからね」
(`∀´ )『うんうん、ホンマに立派なもんやで。僕あんまし戦ったことあれへんから感心してもうたわ』
ヽ| ・∀・|ノ「え、戦ったことがない?」
(`∀´ )ゞ『まともに兵士率いてったのはアイルランド行ったときくらいやなぁ。それまでほとんど人任せやったから…』
ヽ| ・∀・|ノ「へぇ~。なんか戦ったことありそうな感じしてたんでてっきり…」
(`∀´ )『てかシャルル君。アジャンクールで何があったん?』
ヽ| ・∀・|ノ「え?そりゃゴダンどもと戦って負けて捕まったんですよ」
(`∀´;)『は?確か僕がイザベルちゃんを嫁にもろた時に28年休戦っちゅー話がまとまったと思うんやけど?』
ヽ| ・∀・|ノ「ヘンリー5世陛下に代替わりしてからどうも政策が変わったらしくて。まぁこっちも色々ゴタついてて、隙を突かれたというか…」
(`∀´ )『モンマスのクソガキがどうかしたんか?あとフランスがゴタついとるっちゅーのはどういうことなん?』
小首をかしげるリシャールに、オルレアン公は淡々と話を続けた。
ヽ|;‐∀‐|ノ「シャルル6世陛下の政権を代行すべきかということでわがオルレアン公家とブルゴーニュ公家で数年来争っておりまして。
それで父は8年前、ブルゴーニュ公の手の者に殺されてしまったんです…。しかし向こうを訴えようにも決定的な証拠がないし、
父の政策への批判やら父に関する根も葉もないこともない悪い噂を流されて泣き寝入りですよ!」
(`∀´;)『イザベルちゃんからシャルルさんが病気がちって聞いとったけど、そんなに具合悪いんかいな!
しかもブルゴーニュ公にルイ叔父さんが殺されたぁ?フィリップさんがまさかそないなこと』
ヽ|;・∀・|ノ「シャルル6世陛下はずいぶん前から心の具合が悪いんです。あと今のブルゴーニュ公はジャンさんです」
(`∀´;)『僕が死んでからいったい何があったんや…』
リシャールがイングランド国王を退位してから15年と少しの間に何もかもが変わっていた。
ヘンリー4世は病没し、フランスと結んだ休戦協定は破棄され、新王ヘンリー5世がドーヴァー海峡を渡りフランス本土に侵攻を続けているという。
その結果としてオルレアン公シャルルがこの地にやってきたのである。
ヽ|;・∀・|ノ「アングルテールのゴダンはマジでヤバかったですよ。弓兵が雨あられと矢を降らすもんですから、馬がやられて使えないんです」
(`∀´;)『あー、モード・アングレやな。父ちゃんからクレシーの話を聞いとったから知識としては知っとるけど、実際どうなん?』
ヽ| ;'∀`|ノ「実際って…うぅん、二度とあんな目に遭いたくないと心の底から思いますよ。
兵士たちはめげるくじける、僕がハッパかけても聞きゃしない。騎士の手本を見せてやる!と思って突撃しても誰もついてこないし…」
だんだんオルレアン公の声がか細くなり、ついに背中を丸めて地面にしゃがみ「の」の字を書きだした。
| ヽ'A`|ヽ「……向こうに地の利があったにしても、5万人もいてこりゃないよなぁ…陛下に顔向けできないよ…」
⊂(`∀´;)『…堪忍な、シャルル君。聞いてはあかん事を聞いて色々ほじくり返してもうたみたいで』
| ヽ'A`|ヽ「僕に指揮官としての器が欠けていたせいで、沢山の人たちを犠牲にしてしまったんだ…」
(`∀´;)『そないに自分を責めたらあかんで?悪いんは喧嘩仕掛けてきたモンマスのクソガキやろ』
| ヽ'A`|ヽ「…いや、それがどんな鬼畜ゴダンかと思ってお会いしてみたらものすごく生真面目ないい人で」
(`∀´;)『…ま、確かに小さいころからこまっしゃくれたとこはあったけど、あのヘンリー野郎にはもったいないくらいのよくできた子供や。でも…
僕がせっかく結んだ条約をワヤにしたのはどうかと思うで?』
| ヽ'A`|ヽ「イザベルからリシャールさんを引き離した父親の息子なんだからって思って、今までずーっと敵だと思ってきたんすよ?
それこそブルゴーニュのジャンさんと同じくらい怨んできたんです…
なのにあの人、僕に会った瞬間に目に涙をためて手を握ってきたんです」
(`∀´ )
| ヽ'A`|ヽ「それで、家臣や身内の方もその場から引き下がらせて、僕に謝ってきたんです。
『いとこ殿。イザベル王女に対して、そしてリチャード陛下に対して私の父が犯した所業をどうかその広い心をもって許してほしい。
とても充分とはいえないだろうが、父の罪はこの生涯をかけても償うつもりだ』って…」
(`∀´ )『ふん、お坊ちゃん育ちの甘ちゃんがそないなこと言うてもな!』
オルレアン公は『あんたがそれを言うか』とこみあげてきた言葉を喉の奥に押し込み、黙って俯いた。
ヽ|;'∀`|ノ「…でも先ほどあのゴダン、じゃなかったアングルテールの貴族が言ってましたよ。
ヘンリー5世陛下はリシャールさんのご遺体をキングス・ラングリーからウェストミンスターに改葬なさったと」
(`∀´#)『あのなぁ、僕ず~っとこのロンドン塔で動けんままやねんで?そんなこと知るかっちゅーねん』
ヽ|;'∀`|ノ「……………」
ページをめくる