リシャールはしばらく不機嫌そうに窓際をうろついていたが、ふいにオルレアン公のほうを振り向いた。
(`∀´ )『せや、ウェストミンスターには僕があらかじめ頼んどいたアネットちゃんと一緒の特製の棺があってなぁ!
あと僕の絵も入り口んとこに掛かっとるはずや』
ヽ|;・∀・|ノ「棺とリシャールさんの絵?なんかアヴァンギャルドなの描きそうですよね、リシャールさn」
ヾ(`∀´ )『ちゃうちゃう。僕「の描いた」絵やのうて僕「を描かせた」絵やって!
今でこそこんなみすぼらしゅうなっとるけどな、僕は昔は超イケメンでな。ぶっちゃけヨーロッパいちを自負しとったくらいで…』
ヽ|;・∀・|ノ「自意識過剰乙」
(`∀´#))『自意識過剰ってなんやねん!ありし日の僕を見たらシャルルくんかてきっとたまげるで?』
ヽ|;・∀・|ノ「と言われましても」
確かに二枚目だったのだろうという面影はあるにはあったが、それ以上にリシャールの性格が三枚目すぎて発言が説得力に欠けていた。
m9(`∀´#)『いっちょウェストミンスター行って僕のイケメンっぷりを拝んでこい!国王命令やで!』
ヽ|;・∀・|ノ「ひどいムチャブリですね!囚人としてこのロンドル塔に収監されてる僕がロンドル市内、しかも国王が戴冠を行う
聖域を自由に動き回れるとでもお思いですか!?」
m9(`∀´#)『ヘリフォードのヘンリー野郎が国王名乗ったくらいや、身分なんぞいくらでもごまかせる!』
ヽ|;・∀・|ノ「これはひどい!」
●=(`∀´●)『僕がイケメンやったと信じようとせんお前のほうがよっぽどひどいわ!』
ヽ|;+∀+|ノ三「わーっ!」
次の瞬間、部屋の中に何か大きな力が働いてオルレアン公を扉の外まで跳ね飛ばしてしまった!
そして態勢を戻して起き上がろうとするオルレアン公の目の前で扉が大きな音をたてて閉まった!
ヽ|;・∀・|ノ「ちょっとリシャールさん!何の冗談ですか、そこは僕の部屋なんですよお!」
(`∀´#)『僕の言う事を信じないなら戻ってこんでええわ!とっととウェストミンスターに行って目ぇかっぽじって確かめてこーい!』
ヽ|;・∀・|ノ(目をかっぽじったら何も見えませ~ん!)
リシャールに部屋を放り出されたオルレアン公は頭を抱えて座り込んだ。
/|;・∀・|\「あああ…さしあたって今夜のごはんと寝床どうしよう」
へたりこんでいるオルレアン公のそばにちょうどイングランド貴族が通りかかってきた。
( ・∀・)「おや?そんなところに座りこんでどうなさいましたかオルレアン公」
ヽ|;・∀・|ノ「おお、天の助け!実はウンコしに外に出て戻ったら部屋の扉が開かなくなってしまったんですよ」
(;・∀・)「なに、それは大変だ!なんとか開けてみますからちょっとどいてくださいますか」
ヽ|;・∀・|ノ「お待ちください、実はウンコしたあと手ェ洗ってないんすよ」
( ;∀;)ノシ「ぬわーっ!もう触っちゃったじゃないですか、これだからファッキンフレンチは!」
イングランド貴族は慌ててポケットからレース仕立ての優雅なハンカチを取りだして扉の取っ手を拭きだした。
(;・∀・)A゛「あーもう、マジファッキン!ガッデム!」
ヽ|;・∀・|ノ「ごめんなさい、これからはなるべく手を洗うようにします」
(;・∀・)A゛「当たり前です!あんたの国の衛生管理はどうなってんすか!」
ヽ|;・∀・|ノ「路上にウンコはお互い様でしょ。だいたいそっちのごはんは死ぬほどマズイって評判じゃないですか」
イングランド貴族はオルレアン公の発した『テンプレイギリス人』の物言いに呆れ顔で肩をすくめた。
(;・∀・)A゛「失礼な、ローストビーフとスコーンにかけては天下一ですよ」
ヽ|;・∀・|ノ「ていうかあんたの国で食えるものはそれとフライドフィッシュくらいじゃないっすか」
(#・∀・)A゛「そういうイメージでわが国を語らないでいただきたい。少なくとも我々貴族層のごはんはフランスで出しても
負けない自信があります、イングランドすべてがメシマズだと思わないでほしいですね!」
ヽ|;・∀・|ノ「ご、ごめんなさい…ところでそのハンカチ、そうとう手の込んでいるものとお見受けしました。ひょっとして名のある貴族の方ですか?」
黒目がちな薄茶色の目をオルレアン公に向けたイングランド貴族はハンカチを折りたたんでポケットにしまった。
( ・∀・)「はい、私は王弟のベドフォード公ジョン・オブ・ランカスターと申しますので」
ヽ|;・∀・|ノ「はいぃーっ!?国王の身内の方はみんな一緒にアジャンクールに出征してるんじゃ!?」
( ・∀・)「陛下とトマス兄上とハンフリーが出征してる間、私は留守番任されてるんです。
みんないなくなったら誰がイングランド国内をまとめるんですか。常識的に考えてくださいよ」
ヽ|;・∀・|ノ「そ、そういえばそうだ…でも王弟ともあろう方がどうしてこんなとこに」
( ・∀・)「ロンドン塔は宮廷も兼ねてますし。それにあなたのようなフランス王家につらなる高位のお方がいらっしゃるんですから
こちらも礼を失さないようにしなくてはなりますまい?」
ベドフォード公は栗色の髪をかきあげながらオルレアン公に話を続けた。
( ・∀・)「あとですね、さっき私のところにオワイン・テュードゥル君が泣きながらやってきましてね」
ヽ| ・∀・|ノ「御輪院?」
( ・∀・)「ウェールズ貴族の子です。ほら、ぽっちゃりしたニコニコ顔の」
ヽ| ・∀・|ノ「あー、あの子ってウェールズ人なんですかぁ」
( ・∀・)「ええ、話を逸らさないでいただきたい。あなたが殴ったとお聞きしましたが、何か理由がおありの上で殴ったんでしょうね?
もし無意味な因縁つけとかだったら貴族にみだりに暴行を加えた罪で裁判にかけますよ」
ヽ| ・∀・|ノ「だってー、僕の愛するイザベルを侮辱したんですよぉ」
ベドフォード公は焦った様子を見せた。
(;・∀・)「イザベルって、イザベル・ド・ヴァロア王女ですか」
ヽ| ・∀・|ノ「はい。オワイン君はリチャード2世陛下と僕が穴兄弟でしょとのたまいましたよ」
ベドフォード公はとっさに両手で顔を覆って天を仰いだ。
(;・∀・)「あぁー…そりゃ殴られても文句言えませんな」
ヽ| ・∀・|ノ「でしょ。むしろ僕のほうが妻への侮辱罪でオワイン君を訴えたいくらいですよ」
(;・∀・)「そ、それはちょっとやめていただけないでしょうか…お詫びになんでもしますから」
ヽ| ・∀・|ノ「じゃあ僕をウェストミンスターに連れてってくださいよ」
(;・∀・)「えぇっ、ウェストミンスターは聖域だし…
そもそも国王の戴冠を行う神聖な場所ですよ、みだりによそ者を入れるわけには」
ヽ| ・∀・|ノ「お詫びになんでもするっておっしゃいましたよね?それに僕は元イングランド王妃イザベルの夫です。
あなたの国に少なからずご縁があるわけだし、よそ者とはいえないと思いますよ」
(;‐∀・)「うーん、まぁ確かに…しょうがないな、今回だけは特別に許可を差し上げましょう!」
片目を瞑ったベドフォード公にすかさずオルレアン公は言葉を畳みかけた。
ヽ| ・∀・|ノ「そんならオワイン君も連れてきてください。仲直りはしておきたいし。
あとベドフォード公のジャンさん、あなたにウェストミンスター寺院の案内をお願いしたい」
(;・∀・)「うわー、なんて図々しい」
ヽ| ・∀・|ノ「せっかくアングルテールまで来たわけだしこの国の名所とか見ておきたいしー。でも僕はフランスの『よそ者』ですからね、
案内がないと判らないでしょうよ!だいたいさっきなんでもするって言ったじゃないですか。契約違反なんじゃないっすか?」
(;・∀・)「はいはい!わかりました、私自らご案内させていただきます!」
ヽ| ・∀・|ノ「あと扉は開きましたか?」
(;・∀・)「あ、忘れてた!」
ベドフォード公は扉を押したり引いたりしてみたが、一向に開く気配がみられない。
( つ∀・)「なんてことだ、全く歯が立たないぞ…」
ヽ| ・∀・|ノ「困ったな―、これじゃ僕の今夜のごはんと寝床がないよー」
(;・∀・)「…………」
ヽ| ・∀・|ノ「いやー、ほんと困ったなー。僕、フランス王家に連なるオルレアン公なのに今夜のごはん抜きで床で寝ろってわけかー。
アングルテールってそういうことするんだぁー?全くゴダンはこれだから…」
(;‐∀‐)「…わかりました、代わりのお部屋を提供しますんで今夜はそこでお休みください」
ヽ| ・∀・|ノ「メルスィー・ボクゥ♪」
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