(`・д・´)「とりあえず精いっぱいカッコつけてはみたものの…」
ご飯を食べてから、リチャードは一張羅の洋服を着込んで鏡の前に立っていた。
(´・д・`)「…んー、せっかくエディ兄ちゃんがセレクトしてくれたけど、あんまり似合ってないな…
5~6年前ならまだ似合ったかもしれないのに」
変声期から何年か経った今こそすっかりゴツくなってしまったリチャードだが、数年前までは体つきも華奢で幼い顔立ちで人懐っこい、
普通に可愛らしい男の子だったのである。それが変声期を過ぎてアダムのリンゴが目立ち始めた頃からがくっとイケメン度が下がった。
男性というのは大人に近づくにつれ、体つきがたくましくなり顔が面長になる。
そして何よりもヒゲの手入れとか汗染みとか濃くなっていくギャランドゥに悩まされるようになるのだ。
(´・д・`)「うぅん…アンヌさんからも『ふってぇ声の男が女の声色真似すんなきめぇw』て笑われたし…」
5~6年前まではリチャードもここまで野太い声ではなかった。むしろ男にしては高いほうだった。
可愛らしい男の子をゴツい男性へと変えてしまう年月というのは、ひどく残酷なものである。
(´;д;`)「…アンヌさんの前でチソコふくらませてチソカス野郎って言われるし」
言うまでもなくアンの前で駄目なところばかり露呈していたことに改めて気付いたリチャードは、鏡を前に自己嫌悪で頭を抱えてうずくまった。
(´・д・`)「はぁ…、告っても無駄な気がしてきた」
リチャードは重苦しい気分でボンネットを頭に載せると、鏡で全身像を確認してから部屋のドアに近づき、ドアノブに手をかけた。
(`・д・´)「もう結果は気にせず、アンヌさんに自分の気持ちを正直に伝えよう!
アンヌさんが僕を受け入れるかそれとも振るか、なんて心配しても無駄だし。
てか1回振られてるわけだから怖いものなんて何もないぞ!がんばれ僕!!」
リチャードは両手で自分の頬を叩くしぐさをしたあと、勢いよく部屋のドアを開けて外に出たのだった。
さて、一方のアン・ネヴィルはというとリチャードと同じように居城の一室に引きこもって食事もせず
色々と考え事をめぐらせていた。
*(;´ `)*「はぁ~、まさかリッチーくんが私のことを好きだったとは」
ついこの間まで、アン・ネヴィルにとってのリチャードはただの幼なじみのパーフェクト☆アウェー的存在だった。
しかもリチャードの兄たちがそろいもそろってアンの父と婚約者を奪ったのである。
いわばリチャードはアンにとって、敵の一族と言って差し支えなかった。
*(;´ `)*「冗談だと思ったらすっごい真剣な目でこっち見てくるし、こっちの肩ひっつかんで今にも押し倒しそうな勢いで迫ってくるしぃ…」
あの時、アンにとって天地がひっくりかえってもあり得ないだろうと思っていたことが立て続けに起こった。
敵の一族で、幼なじみの「リッチーくん」に久しぶりに会ったと思ったらなんか告白とかされたのである。
アンはあの告白を聞いた時、これは間違いなく罰ゲームかなんかをやらされてるに違いないと邪推した。
*(´ `)*「あ。リッチーくんのことだからきっとエディお兄さんや馬鹿兄さんにけしかけられて、私に告白してこいとか無茶振りされたのよね。
なんたって私、婚約者を亡くしたばかりだものね~」
テュークスベリーでのプリンス・オブ・ウェールズの突然の戦死はまさしく晴天の霹靂だった。
しかしグロースター公リチャードの告白もまた、アン・ネヴィルにとっては晴天の霹靂だった。
*(;´ `)*「そうでもなきゃこんなガサツな私が告られるとかあるわけないし。リッチーくんと会ったときだってチソコにキソタマ連発だったじゃん…
うん、リッチーくんがなんかチソコとかふくらませてたような気がするけどありゃ多分、私が見た幻覚だったのよ。
リッチーくんが私を見てそんな気持ちになるとかマジありえんわ。うんうん」
アン・ネヴィルは幼いころから周りの大人に将来美人になるだろうと持てはやされていた。
しかし外見は天使のように可愛くとも、中味がどうしようもなくおっさんだった。
プリンス・オブ・ウェールズの前では必死で猫をかぶっていたアンだったが、グロースター公リチャードに
対しては双方とも幼なじみだけにごまかしが効かなかった。
*(;´ `)*「私の中味を知ってるリッチーくんだもの、そういう目でなんて今さら見れるはずないじゃん?
あいつヘタレだし、兄さんたちから罰ゲーム強要されて私に告りに来たに違いない。でかい釣り針もあったもんねぇ」
アン・ネヴィルの中で結論は『壮大な釣り』ということで落ち着きかけたその瞬間、自室のドアを誰かがノックする音が聞こえてきた。
*(;‘‘)*「はっ、はいはいどなたですかぁ?」
『グロースター公リチャード・オブ・ヨークです!アン・ネヴィルさんに取り次ぎお願いします!』
*( ゚ ゚)*
なんということでしょう。いきなりのご本人襲来にアン・ネヴィルの表情が一気にこわばる。
*(;゚ ゚)*
*( ゚ ゚ )*
『あ、あのぉ…アンヌさんはお見えでしょうか?大切な話があってお邪魔したんですけども…』
*( ゚ ゚)*「………………」
この声から漂う押しの弱さとヘタレ感は間違いなく「リッチーくん」だ。アン・ネヴィルは幼なじみの直感で確信していた。
しかし今はとてもじゃないが、リチャードと面と向かって話せる精神状態ではなかった。
そこでアンは鼻をつまんで声色を変えてごまかす手段に出たのだった。
*( ゚ ゚)*「ゴシュジンサマ ハ イマ ソト ニ デカケテ オルス デス。 マタ ノ ゴホウモン ヲ オマチ シテオリマス」
『……あっ、そうですかぁ…』
*( ゚ ゚)*(ありゃ、ごまかせたわ)
ドア越しの二人のあいだに一拍の奇妙な間が置かれる。
『…って、 ご ま か さ れ る と 思 っ た ? 』
*(;゚ ゚)*そ
ドア越しのリチャードの声はやや苛々した様子でとげとげしくなっていた。
『アンヌさん、アレでしょ。鼻とかつまんでたでしょ、今』
*( ゚ ゚)*「イエイエ。ソンナコト アリマセンヨ。ゴシュジンサマ ハ ココニハ イマセンカラ」
『……じゃあドアを開けてもいいでしょうか。中にいるのがアンヌさんか侍女なのかちょっと確認したいので』
*(;゚ ゚)*(やべっ、開けられたらガチでバレるwwww鍵閉めないとwwwww)
アンは光速でドアの鍵をかい、リチャードが入ってこられないようにした。
『ん~?あれぇ?ちょっ、鍵開かないwww何をしたしwwwww』
*(;゚ ゚)*(よし、今のうちに窓から逃げるわよ!)
アン・ネヴィルはものすごい勢いで窓の鍵を開け、カーテンを引きちぎって長いひも状に結び付けて即席のロープを作った。
勿論窓から垂らして下に降り、エスケープするためである。
『おまっ、鍵閉めたなwwwふざけんなしwwwww』
ドアノブがガチャガチャと派手な音を立てる。
そしてリチャードの声に焦りが加わっていくのが傍から聞いていてもわかるほどになった。
*(;゚ ゚)*(早く、早く逃げないとっ…)
『…鍵が閉まってるんなら、これを使うしかないな…』
リチャードが何か思い切ったようなそぶりで低くつぶやき、なにやら重いものを取りだす音が聞こえてきた。
一方のアンは飾り窓の穴にカーテンロープをくくり付けてきつく縛りつけた。と、その時であった!
『うおおおおおおおおおお!!!11!!!!1』
*(|||゚ ゚)*「きゃあーっ!?」
次の瞬間、リチャードがライオンの咆哮のごとき叫び声をあげながらドアをぶち壊し、アンの部屋を強行突破してきた!
なんとその右手にはバトルアックスが握られている!
(` - ´)「…やっぱりいたんじゃん、アンヌさん…」
*(|||゚ ゚)*「!?…?!!…!」
右手にバトルアックスを握りしめたグロースター公リチャード。その姿はどう見てもシャイニングだった。
グロースター公リチャードはバトルアックスを握りしめたまま、じりじりとアン・ネヴィルに近づく。
*(;゚ ゚)*「あ…、リッチーくん、落ち、着いて…」
(` - ´)「僕ね、アンヌさんと話をつけに来たんだよ。それなのに鍵を閉めるとか酷いなぁ」
*(;゚ ゚)*そ(話をつける→バトルアックス→私頃される!!?)
リチャードは何を考えているのか推し量れない無表情を顔に貼りつけてアンに迫る。
(` - ´)「アンヌさん…この間の話なんだけど」
*(;゚ ゚)*「リッチーくん!落ち着いて話しましょ、だからその右手のバトルアックスを捨てて!」
(` - ´)「うん?」
リチャードは今気付いたといった表情で自分が握りしめている凶器を見つめた。
(`・-・´;)「あっ、いや…これはドアを開けるために使っただけで、アンヌさんをどうこうしようってわけじゃないから!ビビらせてごめんっ」
リチャードはバトルアックスを慌てて手から離した。あたりに凄まじい落下音が響く。
*(;‘‘)*「あービックリしたぁ。寿命が30年くらい縮まったわ!」
(`・-・´;)「ご、ごめん!ひょっとして勘違いさせちゃった?」
*(;´ `)*「当たり前でしょ!死ぬ覚悟をしかけちゃったわよ」
アン・ネヴィルはリチャードが自分に危害を与えるつもりはないと知って安心したのか、その場にへたりこんだ。
(`・д・´)「えっと、それで話なんだけど…」
*(;´ `)*「?」
へたりこむアンの手に、リチャードは自分の指から指輪を引き抜いてサッと差し出した。
゚⊂(`・д・´*)「Marry me!(結婚しよ!)」
*(;゚ ゚)*そ
アン・ネヴィルはちょっと待て、といわんばかりの雰囲気を顔全体から漂わせている。
*( ゚ ゚ )*「…けっ、こぉん…?」
゚⊂(`・д・´*)「ん、結婚!だからこの指輪受け取ってよ。それからアンヌさんの指輪をちょうだい」
心ここにあらずといったアンとは対照的に、間違いなく脳内で結婚式の教会の鐘の音を聴いているだろうというほど浮かれているリチャード。
だめだこいつ早くなんとかしないと…
*( ゚ ゚ )*「…ちょっと待って。指輪云々の前にどうしてそうなるのか3行で説明してくんない」
(`・д・´*)「・僕はアンヌさんのことが好き
・エディ兄ちゃんとジョージ兄ちゃんからもGOサインを出してもらえた
・だからプロポーズしに来た」
*( ゚ ゚ )*「OH…」
よどみなく3行で状況を説明しきったリチャードはドヤ顔をしてみせた。
(`・ー・´*)「ね、そういうわけだからアンヌさん、僕と結婚してよ!」
*( ゚ ゚ )*「…えーと。あんたの意思はともかく、私の意思を無視するつもり?」
Σ(´・д・`;)
アンから冷静なツッコミを受けたリチャードの顔色は一瞬で羊皮紙よりも真っ白になった。
(´・д・`;)「えっ…アンヌさん、僕のプロポーズ…いや、なの」
*( ゚ ゚ )*「いや、嫌とか嫌じゃないとかじゃなくって。いきなりすぎて話についてけない」
Σ(´ д `|||)
冷静になって考えてみれば、アン・ネヴィルが言うことも最もだった。
アポなしで突撃してきて部屋の扉をバトルアックスで破壊した男が指輪を贈ってプロポーズしたところでいたずらに
相手の恐怖を煽るばかり、『愛している』と100回言ったところで説得力皆無ではなかろうか。
*(;‘‘)*「えぇとね、なんて言えばいいのかな…うん、やっぱり唐突すぎよリッチーくん。
とりあえず部屋のドアを直してくれたら返事を考えないでもないけど」
(`・д・´*)「!」
青ざめていたリチャードの表情に血色が戻った。
(`・д・´*)「本当に?この部屋のドアを直したら返事してくれるの!?」
*(;‘‘)*「え、あ……まぁ、考えないことも…」
(`・д・´*)「わかった!じゃあきみのところの召使いにのみと金槌と木材とペンキとニスを借りてくるよ!」
*(;‘‘)*「待って、その前にこの壊れたドアと散らばった欠片をなんとかしてよ!」
(`・д・´*)「うん!それじゃあまずホウキとチリトリとゴミ袋を借りてくるね」
そう言うとリチャードは意気揚々と壊れたドアを外し、てきぱきと掃除の準備を始めた。
*(‘‘)*(あらら、結構簡単に言うこと聞いてくれちゃったわ…)
(`・ー・´*)「♪」
リチャードは鼻歌まじりに壊れたドアを片付けて、召使いが持ってきた材料類で新しいドアを作り始めた。
( ^ω^)「グロースターのリッチーさん、ご所望ののみと金槌と木材、それからペンキとニスを持ってきましたお。
でもなんでいきなりご自身でドア作りをしようと思ったんですかお、こんなもん専門の職人にでも任せれば…」
(`・ー・´*)「僕が壊したものは僕自身が作りなおさなきゃ意味がないだろ?
職人に頼んで作らせるのは簡単さ、でも他力本願で作り上げたものでアンヌさんの信頼を取り戻すことはできないよ」
*(‘‘)*(ふむ…けっこうクソ真面目というか律儀というか…)
( ^ω^)「しかしリッチーさんおひとりではドアを作り直す作業は難しいんじゃ…だいたいリッチーさん、金槌とか持ったことありましたかお…?」
(`・ー・´*)「金槌じゃなくて戦鎚なら何度か使ってるよ。要領は一緒じゃないの?」
召使いとアン・ネヴィルは顔を見合わせた。
*(;‘‘)*(…釘やのみを叩くか、人の頭を叩くかの違いってやつ?)
(^ω^;)(まぁ、要領は確かに一緒ですが…なにか根本的に間違ってませんかお?)
(`・ー・´*)「♪♪」
もちろん素人がドアを直すのは容易な作業ではなく、リチャードは泊まり込みでアン・ネヴィルの部屋のドアを修復することになった。
あとリチャードの返答を聞いてちょっと心配になった召使いが専門の職人を呼んで、ドア作りの要領を彼に教えてくれた。
ともかくもこの日曜大工作業はかなり過酷で大変なものとなったが、リチャードにとっては愛しのアンが近くにいてくれる中での作業
だったのでつねに最高の気分と環境でドアの修復に挑むことができたのである。
そして2週間が経ったころ、ついにリチャードの手でアン・ネヴィルの部屋に新しいドアが取り付けられた…!
(`・д・´*)「ついに ねんがんのドアが かんせいしたぞ!」
( ^ω^)「そう かんけいないね
メ几
にア木又してでも うばいとる
ゆずってくれ たのむ!!」
(`・д・´;)「な、なにをする きさまらー!」
*(‘‘)*「変なお芝居してる場合?私からお礼くらい言わせてよね!」
アン・ネヴィルは自分の指からそっと指輪を引き抜いて、リチャードのてのひらの上に乗せてあげた。
゚⊂(`・д・´)「えっ?」
*(‘‘)*「ドアを直してくれたお礼よ。リッチーくんのプロポーズ、受けてあげる!」
一瞬何が起こったのかわからないという顔をしたリチャードだったが、その表情はすぐに満面の笑みに変わった。
((`・Д・´*)))「Ha,ha,ha...Hallelujahhhhhh!!!!!!」
リチャードの口からついて出た『ハレルヤ(神様ありがとうございます!)』の叫び。
次の瞬間、彼は両の眼から涙をぼたぼたと流しながら膝をつくと、アンの指輪をまるで聖遺物であるかのように両手で掲げて
窓から差し込む日差しの下で穴があくほど見つめだしたではないか。
(`;Д;´*)「あああぁぁあああああ!!アンヌさんの指輪ぁあああ゛!!!僕やったよ!兄ちゃん、母上、父上、僕やったよぉおおお!!!!」
リチャードは涙を流しつつ歓喜の叫びをあげてアン・ネヴィルの指輪を両手に握りしめた。
( ^ω^)「アンお嬢様、ずいぶんあっさりとグロースターのリッチーさんのプロポーズを受けられましたお?」
*(‘‘)*「リッチーくんは誰の手も借りずに、私の部屋のドアを一から直してくれたわ。
私はリッチーくんの誠実さに、それと同じ誠実さでもって応えてあげる必要があると思ったの。
だから私はリッチーくんに私の指輪を渡したのよ」
( ^ω^)「ふむむ。まぁリッチーさんなら、昔からアンお嬢様とは仲がよろしかったし…
どこぞの馬の骨のような男よりはよっぽどお嬢様を安心してお任せできますおね!」
*(*´ `)*
アン・ネヴィルは召使いの言葉にほんのりと頬を染めたのだった。
ページをめくる
目次にもどる