(;`・д・´)「僕の格好、変じゃないよねぇ?」
(^ω^ )「…僕のコーデに何かご不満でも?」
(;`・д・´)「や、そういうんじゃなくって」
召使いが張り切って用意してくれた婚礼衣装は、幾何学的なバラの花模様が細かく刺繍されたブルーグリーンのダブレットの上に
ターコイズブルーのブロケードで出来たウプランドという組み合わせ。襟周りと袖口と裾には白テンの毛皮が縫いこまれている。
(;`・д・´)「ちょっと派手すぎると思わない?」
(^ω^ )「どんだけ人が集まると思ってんですかお。これぐらいしなきゃ目立たないですお」
(;`・д・´)σ「冗談じゃない!いつも使ってる黒いクロークがあるでしょ。それ取ってきて」
(^ω^ )「なんと…人生に一度の晴れ舞台の婚礼に地味な格好をしていくおつもりですかお!?」
(;`・д・´)「だってこれ着てたら悪目立ちしちゃうもん!」
リチャードと召使いがやりとりをしている間に、東の空に太陽が顔を出しつつあった。
昇る朝日でウプランドにふんだんに織り込まれた金糸銀糸が眩くきらめいて、あたかもリチャード自身から発光しているようにも見える。
良い方向かはたまた悪い方向かはともかくとして、目立つことは間違いなしだ。
(^ω^ )「僕がせっかく仕立てを頼んだ素晴らしい礼服を、普段使いの真っ黒クロークで隠そうとなさるとはとんでもない!」
(;`‐д‐´)「こんな緞帳引きずってるみたいな派手な服は僕向きじゃないって。エディ兄ちゃんか馬鹿兄ちゃんに熨斗つけて渡したいよ、全く!」
(^ω^ )「クラレンス公はいいとして、陛下にこのサイズは小さいと思いますおw」
(;`‐д‐´)「…サイズの話はやめにしよう。ともかくこれはないよ、これは…」
リチャードはウプランドの袖をつまんで、袖口に縫いつけられた白テンの毛皮を困った様子で見つめた。
(^ω^ )「グロースター公。自信をお持ちくださいお!貴方はこのイングランドの王弟、立派な王子様なんですお」
(;`‐д‐´)「あのさ、物語に出てくるような完全無欠な王子様ってほんの一握りだと思うわけ。
で、僕は明らかにそういうテンプレ王子様とは程遠いわけ…言ってることわかる?」
(^ω^ )「薄々わかりますが、敢えて無視させていただきますお。
だって王子様なら王子様らしい格好で姫君をお迎えしなくてはいけないものでしょうお?
それに結婚式にまみえる花婿たるもの、花嫁の目にはパリスのように美しく!オデュッセウスのように賢く!
そしてヘラクレスのようにたくましく!そう映るように心がけなくてはなりませんお」
(;`・д・´)「例えがてっぺんにも程があるよ。僕にはとてもできない」
(^ω^ )「できないじゃなくてやるんですお!さ、時間が迫っておりますので出発なさってくださいお」
(;`・д・´)つ「ちょっ、その前にクローク持ってきてってば!」
(^ω^ )「後でお持ちいたしますから。ではいってらっしゃいませお」
召使いはぺこりと一礼してリチャードを見送った。
リチャードは道すがら何度か後ろを振り返りつつ馬を走らせていたが、召使いが後から追ってくる様子がないので内心焦っていた。
(;´・д・`)「まだかなぁ、僕のクローク…」
やきもきするリチャードだったが、結局召使いが来ないまま教会に着いてしまった。
リチャードは現地に前もって来ていた別の召使いに馬を預けてなおキョロキョロと周りを見まわしていた。
(;`・д・´)「…ひょっとして騙された?」
すでに太陽は空の真南、リチャードの真上に昇りつつあった。教会の周りに集まった人々が彼の姿を見るなり歓声をあげる。
『ちょwwww発光パネェww』
『後光が差してるwwマジ拝wみwたwくwなwるwww』
『かっけぇwwwグロースター公マジかっけぇwwww』
同年代と思われる貴族の一団がリチャードを囃し立てるので、彼は居心地悪そうに眉をひそめた。
(;`゙-゙´)「…あー…早く家に帰りたい…」
不機嫌そうに腕を組むリチャードの肩を誰かがポンと叩いた。
(`・-・´)「ん!誰?」
リチャードが振り向くと知り合いの貴族が後ろに立っていた。
( ^ω^)ノシ「グロースター公、おはお!」
(`・ー・´)「あっ、おはよ!ねぇ、アンヌさんはもう中にいんの?」
( ^ω^)「えぇと…30分くらい前にこっちに来たから、もう準備万端ぬかりないはずだお」
(`・д・´)そ「げぇっ、そんな前から来てんだ!?急がなくちゃ!」
リチャードはなるべく周りを見まいと俯きながら教会内陣に向かっていった。
先に到着していたアンが司教と相対して祭壇の前に佇むのを認めたリチャードは、おそるおそる彼女に近づいてぽんと肩を叩いた。
(;`・-・´)っ「あの、ごめん…待ったかな?」
*(;∩゙)*「それほど待ってないけど…なにその格好」
(;`・Д・´)そ
教会の中でこれでもかというほど灯されている蝋燭の光をリチャードの婚礼衣装が全て反射していた。
ミラーボールも真っ青のリチャードに、アン・ネヴィルは眩しそうに顔を手で覆いながら話を続けることになった。
*(∩∩)*「ベールの下から見ても分かるくらいまぶしいとかありえないし…」
(;`・-・´)「…外に来てた貴族にも『発光してる』って言われてきた」
*(∩∩)*「うん。今のリッチーくん、灯台のてっぺんに立てそう」
(;`‐д‐´)「正直な感想をありがとう。僕もこんな衣装が来るとは思わんかったもんで」
二人の間に気まずい空気が流れる。
*(∩∩)*「…でも指の隙間から見たかぎりでは、そこそこ決まってると思うわ」
(*`・д・´)「えっ、そ…そうかな。僕、アンヌさんにふさわしい格好ができてるかなぁ?
アンヌさん、いつも可愛いけど今日は特別可愛いからさー。ぶっちゃけ僕じゃ釣り合わないんじゃないかって心配で…」
*(*∩∩)*「…………」
ふわふわした雲のようなレースに縁取られたベールの下で、アンはわずかに頬を赤らめた。
(*`・д・´)b「今日のアンヌさん、妖精さんとか天使さまみたいに可愛いよ!」
*(*∩∩)*「…褒めてもなにも出ないわよ?」
(o`・д・´)o「もー!どうしてそんな事言うかなぁ。こっちは本気で言ってるんだってば」
*(*∩∩)*「そっちこそそんな事言わんといてよ、なんか恥ずかしくなってくるし」
アンは肩に腕を廻そうとしたリチャードの手を払いのけて、首を横に振った。
そんなアンをリチャードはしばらくじっと見つめてからふっと唇の端を持ち上げた。
(*`・ー・´)「………♪」
*(*∩∩)*「なによー、リッチーくんったらニヤついちゃって」
(*`・ー・´)「や、アンヌさんにも可愛いとこがあるなーって思って…」
*(*∩∩)*「むぅ…」
アンは顔を俯かせて黙り込んだ。
(司教^ω^)「あのー、二人してのろけるのはそろそろやめにしてくださいますかお」
*(*‘‘)*そ「の、のろけてなんかいません!」
(*`・д・´)「そうです、褒めてるだけです!」
司教はアンとリチャードの物言いにやや呆れ顔だ。
(司教^ω^)「これは失礼、どっからどう見てものろけてるようにしか見えませんでしたお」
(*`・д・´)*(*‘‘)*「「のろけてませんったら!」」
(司教^ω^)「おっおっw仲のおよろしいことで…」
司教は生暖かい眼差しを送りつつアンとリチャードの手をとって重ね合わせた。
(司教^ω^)「グロースター公リチャード様、花嫁アン・ネヴィル様を生涯愛し抜くと誓いますかお?」
(*`・д・´)「もちろんです!」
(司教^ω^)「ウォリック伯女アン様、花婿リチャード・オブ・ヨーク様を生涯愛し抜くと誓いますかお?」
*(*´ `)*「はい!」
リチャードもアンも二つ返事で誓いを立てたので、司教は厳かな口調で続けた。
(司教^ω^)「ここに花婿と花嫁の間で生涯にわたる契約がなされたことを宣言いたしますお」
こうして蝋燭の光がきらめく中、リチャードとアンの結婚式前半戦がひとまず幕を下ろしたのだった。
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